父が果樹園の果樹をシャルドネに植え替えた
わたしはウエリントン生まれのホークス・ベイ育ちです。ニュージーランドが好きで、ニュージーランドのことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思い、現在の仕事に携わっています。
そして、もちろん日本のことも大好きです。シドニー、ニューヨーク、ロンドン……仕事でいろいろなところに住みましたが、日本は特に居心地がよく、わたしは前世では日本人だったのではないか? と思うくらいです。なぜだか、帰ってきた、という気持ちになるのです。
先日、群馬県のみなかみに行ったのですが、川があってラフティングやキャニオニングができて、秋には紅葉も美しい場所で、ニュージーランドに似ているように思いました。また、わたしは建築にも興味があるので、新しい建物がどんどんできてダイナミックな東京と京都は面白いですね。ただ、変化のスピードは、ニュージーランドのほうが早いです。
ニュージーランドは今でこそワインで知られるようになりましたが、わたしが子供の頃は、農業、そして酪農や羊毛業が中心でした。現在も農業の地であることは変わりませんが、ワインの文化ができたことで、より洗練された場所に生まれ変わりました。食肉加工場がワイナリーへと変わっていき、ワイナリーが生まれたことで、そこにレストランができ、地元の食が注目され、料理のレベルが向上しました、ホスピタリティも生まれました。
実はわたしはその変化を近くで見ながら育ったんです。
父が果樹園の果樹を引き抜いて、オーストラリアから持ちこまれたシャルドネに植え替えたんです。わたしはアルバイトで、その樹を植えました。学校が休みの日や、学校に行く前に、ブドウ畑にいってブドウの世話をしたものです。
ニュージーランドはサステイナブルな農業も自慢ですが、ブドウ畑の朝は、本当に美しいです。気候は、冬は、雪こそ降りませんが、分厚い氷が道にはるような寒さの一方、夏はドライで暑い。この環境がブドウ栽培に適しています。
もちろん、父はなんの裏付けもなくいきなりシャルドネを植えたわけではなく、友人のクリス・パスクというワインメーカーが、ここではいいブドウが育つ、というお墨付きをくれたことがきっかけになりました。しかし、わずか30年ほどで、これだけ景色が変わって、ワイン文化を花開かせたのはニュージーランド人の勇敢さの現れだと思っています。
ニュージーランドの国民性をひとことで表すなら「勇気」。新しいことに挑戦していくことを恐れず、そして、クリス・パスクもつい最近まで農作業をしていたように、そのための苦労を厭わないんです。ちなみに、今日いただいているこのワインが、そのクリス・パスクのワインです。
ホークス・ベイに限らず、ニュージーランドの地方を、もっと日本の皆さんに見てもらいたいですね。小さな地域にワイナリーが密集していますから、それぞれのワイナリーごとのちがい、テロワールの多様性を感じられますし、ワイナリーのレストランがまた素晴らしいんです。ビーフ、ラムはもちろん、サーモンにサラダ。それからチーズも絶品ですよ!
オススメのワイナリーは「ブラックバーン」と「クリアヴュー」
高いイメージがある? それは誤解です。
ワイナリーのランチは決して高くないですし、スーパーで食材を買ってきて、ニュージーランド人が大好きなバーベキューをするのもオススメです。12から15ドルくらいのワインは充分においしいので、食材を調達して部屋飲みもいいですね。
ふたつだけ、ホークス・ベイでわたしのオススメのワイナリーを紹介しますと、まずは、「ブラックバーン」。丘の上にあって、ブドウ畑の先に川を見下ろせるんです。ここはレストランも最高。そして「クリアヴュー」。こちらは家族経営の小さなワイナリーで、コーストに近い。夏は暑いのですが、日差しがきれいで、海風に吹かれて、地元のフレッシュフードとワインが楽しめます。
ニュージーランド人は親日家がたくさんいます。レストランのメニューには日本語が書いてあることも多いんですよ。さらに、ニュージーランドの先住民族、マオリ族と日本人が文化的に近い、という調査結果もあるんです。家族、自然、環境、そしておもてなしの心を大事にしているところが共通しているようです。
そして、日本の方は効率的に旅をしたいと思っている方が多いかもしれません。そんな方には、夕方に成田を出発し、翌朝にはオークランドに到着して、すぐにフレッシュな空気を吸って一日をスタートできるニュージーランドはオススメです。
ちなみにニュージーランド航空は小さな会社なのですが、世界中から多くの賞をいただいています。機材もサービスも、お客様に常に新しいことを提案しようという姿勢が現れており、革新を恐れないニュージーランド人の勇敢さを感じていただけると思います。
さらに、機内のニュージーランドワインのラインナップが豊富なこともぜひお伝えしておきたいと思います。エコノミークラスでも赤・白2種類ずつワインのご用意があり、ボトルでワインをサーブしますし、たくさん味わっていただきたいので、グラスが空くと、頻繁にサーブしにくるんですよ。
ワイン好きのみなさま、ぜひ、ニュージーランド航空でニュージーランドにいらしてください。