ルクセンブルク最大規模
ドメーヌ・ヴァンモーゼルが創設されたのと同じ、1921年、クレマン・ド・ルクセンブルクの雄、ベルナール・マサールもまた、誕生した。
1931年に大公の宮廷御用達になり、以降、家族経営を守りながら規模を拡大。自社畑こそ38haにとどまるものの、ネゴシアンとして、年間生産量は390万ボトルにおよぶ。ヴァンモーゼルを除けばルクセンブルク最大規模。ルクセンブルクワインの主な輸出先であるベルギーはもちろんのこと、フィンランドとカナダも重要な仕向け先となっている。
その生産量を支え、300万本超を熟成するワイナリーは超巨大だ。
ベルナール・マサールにくわえて、クロ・デ・ロシェ、ドメーヌ・ティルのシャトー・デュ・シェンゲンという、3ブランドで販売されているクレマンとスティルワインが、ここのイメージリーダー。とりわけクレマンは、いずれも国内だけにとどまらない高評価を得ている。
発泡ワインのプラチナアワード
たとえば、2017年にはベルナール・マサールのキュヴェ「エキュソン」がデキャンタ誌で発泡ワインのプラチナアワードを獲得している。
そのスタイルには奇をてらったところがない。スティルワインもクレマンも、基本に忠実だ。
畑で食べたブドウのような味がすること、ストレートに品種の味を表現すること。そのためには、収穫は手摘みでおこなうことを徹底している、という。
スティルワインはルクセンブルクの伝統により単一品種100%となるけれど、いずれも爽やかで澄み切ったワイン。今回は、各品種の垂直試飲はできなかったけれど、他のワイナリーとの比較でいえば、安定感がある。
先述のキュヴェ「エキュソン」含め、価格の手頃さも高評価の理由のひとつではあるとおわれるクレマンは、ベルナール・マサールの「ミレジメ」と呼ばれる2年間の熟成を経たもの、クロ・デ・ロシェのピノ・ノワール100%で、フルーティーさとうまみを感じさせるロゼが絶品。
ワイナリーでは20ユーロ以下でこれらが買えてしまうと聞けば、なるほど、ワインを愛するルクセンブルクの人々が、自国のクレマンびいきになるのも頷ける。