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シャンパーニュ デュヴァル=ルロワを体験

女性・気品・繊細、それから

シャンパーニュ メゾン「デュヴァル=ルロワ」から、6代目にあたる現当主キャロル・デュヴァル=ルロワの長男にして副社長のジュリアン・デュヴァル=ルロワが来日し、東京は表参道のレストラン「&éclé(アンドエクレ)」にて、シャンパーニュとフードペアリングのセミナーを開催した。今回は、そのセミナーにおいて語られた、デュヴァル=ルロワのことを紹介したい。
julien duval leroy

ジュリアン・デュヴァル=ルロワ氏

女のシャンパーニュ

シャンパーニュのネゴシアン、エドゥアール・ルロワが、シャンパーニュ地方コート・デ・ブランはヴェルテュの栽培醸造家ジュール・デュヴァルとともに、高品質なシャンパーニュをうみだそうと、1859年に創設したシャンパーニュメゾン「デュヴァル=ルロワ」。

ジュール・デュヴァルの息子、アンリが、エドゥアールの娘、ルイーズ・ウージェニーと結婚したことで、両家はデュヴァル=ルロワ家とひとつの家となる。そのふたりの息子、レイモンドに引き継がれて、20世紀の前半を過ごしたメゾンは、ふたつの世界大戦での混乱を経験したあと、シャルル・ロジェに受け継がれ、その後、ジャン・シャルルへ、と一族によって歴史を紡いだ。そして、1991年、ジャン・シャルルは39歳の若さでガンによって命を落としてしまう。

ジャン・シャルルとその妻、キャロル・デュヴァル=ルロワのあいだの3人の息子はまだ幼く、メゾンを引き継ぐことはできない。そこで、キャロルがメゾンを受け継いで、デュヴァル=ルロワはいまに至る。今回来日したジュリアン・デュヴァル=ルロワは当時まだ8歳だった、ジャン・シャルルとキャロルのあいだの長男だ。あらたなワイナリーの落成式とともに、正式に、デュヴァル=ルロワを継ぐことを発表したキャロルは、計画していたあたらしいプレステージ・キュヴェを「ファム・ド・シャンパーニュ(シャンパーニュの女)」と名付け、女性であることをいささかもハンデとせず、むしろ、それを強みにする力強さでデュヴァル=ルロワの名声をより高めた。彼女は女性としてはじめて、シャンパーニュ生産者団体会長に就任した人物であり、レジオンドヌール勲章とレオポルド勲章を受賞している、シャンパーニュ地方でも有名な辣腕経営者なのだ。

ガストロノミーのシャンパーニュ

そもそもが、高品質なシャンパーニュを造るために誕生したメゾン、デュヴァル=ルロワは、創業当初から世界的な評価を高めることに積極的だ。19世紀にはコンクールや展示会に出展して実力を示し、名声を高めていった。グラン・クリュやプルミエ・クリュといった格付けがシャンパーニュに導入された1911年には、プルミエ・クリュのブドウのみで造ったシャンパーニュ「フルール・ド・シャンパーニュ」をいちはやくリリースしている。この「フルール・ド・シャンパーニュ」は今日も、デュヴァル=ルロワのラインナップに存在しつづける。

キャロルの時代になってから、メゾンを特徴づけるのがガストロノミーの世界との協業。300の著名なレストランに採用され、ルレ・エ・シャトーのパートナーをつとめ、ガストロノミーの世界とのコラボレーションシャンパーニュをラインナップしている。世界最優秀ソムリエ、パオロ・バッソが手がけた、「キュヴェ・パオロ・バッソ」、世界最高峰のパティシエ ピエール・エルメの助言をえて誕生した「レディ・ロゼ・セック」、デュヴァル=ルロワがスポンサーをつとめるフランス国家最優秀職人賞(M.O.F.)のソムリエ部門へ捧げた「メイユール・ウーヴリエ・ド・フランス・ブリュット」。そして、オーダーに応じたシャンパーニュも造っている。そのオーダーをだしたのは、ホテル格付け最高峰のパラスの認定をうける「ル・ブリストル」のレストラン「エピキュール」の料理長、エリック・フレションとか、「オテル&スパ・デュ・キャステレ」のメインダイニングで腕を振るうクリストフ・バキエで、かれらがシャンパーニュを特注する相手なのだから、デュヴァル=ルロワの実力たるや、推して知るべしといったところだ。

デュヴァル=ルロワの背景

現在のデュヴァル=ルロワは年間販売本数が500から550万本。貯蔵本数1700万本。200ヘクタールの自社畑をもち、うち、47%がグラン・クリュかプルミエ・クリュに格付けされている。本拠地はエペルネの北、ヴェルテュで、そのシャルドネを世界最高と自認する。いっぽうで、温暖化の影響で栽培が難しくなっている、というムニエの使用量が少ない。

オーガニック・シャンパーニュをはじめて生み出したメゾンということもあって、ブドウ栽培はサステイナブル、あるいはオーガニック。5つの村に16の圧搾機を設置し、収穫後すぐに圧搾、果汁をヴェルテュの醸造所に搬入する。

醸造長も栽培責任者も女性で社長も女性という、根幹を女性が支えるメゾンというのも特徴で、150あるという独自の品質基準をパスしてはじめて完成するデュヴァル=ルロワのシャンパーニュが共通で理想とするところは「女性・繊細・気品」という3つの言葉に集約されている。

力強い料理にも負けないはず

さて、今回は、そのデュヴァル=ルロワのシャンパーニュから「ブリュット・レゼルヴ NV」、「フルール・ド・シャンパーニュ・プルミエ・クリュ・ブリュット NV」、「ファム・ド・シャンパーニュ・グラン・クリュ NV」、「ミレジム・プレスティージュ・ブラン・ド・ブラン・グラン・クリュ・ブリュット 2006」、「ロゼ・ブリュット・プレスティージュ・プルミエ・クリュ NV」と5種類ものシャンパーニュを味わうことができた。

共通して感じられるのは、熟成感だ。若さにまかせたキラキラとしたエネルギーというよりも、落ち着いている。

たとえば、ピノ・ノワール60%、ムニエ30%と黒ブドウが主体となるデュヴァル=ルロワの入り口にあたるシャンパーニュであろう「ブリュット・レゼルヴ」も、最低で30カ月の瓶内熟成を経ている。香ばしく、マロラクティック発酵をしていることも関係しているのかもしれないけれど、口当たりがやさしく、まろやかだ。ペアリングではリンゴとチョコレートをあわせていたのだけれど、それはまさに、リンゴのような香りとチョコレートのスパイシーさがシャンパーニュにも感じられるからだろう。樽は使わず、ステンレスタンクでの発酵・熟成。

紅玉りんごを様々な形で…

料理名は「紅玉りんごを様々な形で…」

シャルドネ70%、ピノ・ノワール30%となる「フルール・ド・シャンパーニュ」もステンレスタンク発酵・熟成、マロラクティック発酵、最低30カ月の瓶内熟成というのはおなじ。味わいは、より複雑さを増し、余韻にかぼすのような、柑橘系の酸味が感じられるところがおもしろい。

シャルドネ80%、ピノ・ノワール20%、ドザージュは5g/リットルとなる「ファム・ド・シャンパーニュ」は、全体の13%を、ほとんどが古樽だというけれど、樽で9カ月熟成している。とはいえ、瓶内熟成が8年以上なので、熟成されたシャンパーニュという印象が先にくる。決して、重々しいわけではない。むしろフレッシュで軽快、といっていいとおもう。けれども、内面の豊かさ、力強さもきちんとあって、どんな食事とも折り合ってくれそうな、懐の深いシャンパーニュだ。

ホロホロ鶏胸肉のシュプレームソース&京人参

今回メインだった「ホロホロ鶏胸肉のシュプレームソース&京人参」

次のブラン・ド・ブランは2006年ヴィンテージというところにまず驚いてしまうのだけれど、シャルドネ100%、ドザージュ3g/リットル、ステンレスタンク発酵・熟成、全体の4%を樽で9カ月熟成というのが諸元。ブドウはすべてグラン・クリュ。レモンのような酸味の爽やかさとバターのような、クリーミーさ、熟成によるのであろう香ばしさ。なんとも滋味深く旨い。

rose brut duval leroy

最後にロゼ。ピノ・ノワールのほかに、コート・デ・ブランのプルミエ・クリュのシャルドネを30%入れているところが特徴。ドザージュは10g/リットルで、味わいにはイチゴのようなイメージがある。今回はこれにあわせてイチゴを主体としたデザートが出された。

淡雪いちごと柚子のブリオッシュパンペルデュ&とちおとめソルベ

淡雪いちごと柚子のブリオッシュパンペルデュ&とちおとめソルベ

「&éclé(アンドエクレ)」の料理は繊細で、デュヴァル=ルロワの個性に、ぴったりとよりそうような味だった。ともに、「女性・気品・繊細」を表現していたようにおもう。

けれど、今回、こうしてデュヴァル=ルロワのシャンパーニュを体験してみると、おそらく、もっと味の強い、力強い、あるいは荒々しい料理であっても,
デュヴァル=ルロワのシャンパーニュは決して負けないで寄り添うように感じる。繊細は弱さとイコールではない。

「女性・気品・繊細」というキーワードに、たとえば勇敢、という単語を足してもいいかもしれない。いや、女性というのは強く、勇敢なものか……

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