マコンの若々しい造り手
主に醸造を担当するリシャールさんと弟で畑仕事を担当するステファンさんのマルタン兄弟のワイナリー。所在地はダヴァイエという場所で、AOC的には隣接するサン・ヴェランとマコン・ダヴァイエにまたがって畑をもつ。また、ドメーヌ デュ・モン・エパンというブランドもあり、こちらはヴィレ・クレッセのワインとなる。
ブドウはシャルドネのみ。オーガニックであり、除草剤、殺虫剤、化学肥料は使っていない。ワイナリーのすぐそばにある畑では、この土地の伝統だという、ちょっと変わった栽培を見ることができた。ブドウ樹の枝が弓なりになっているのだ。
兄のリシャールさんによると、ブドウは枝の先端ほど、エネルギーがある。それゆえ、枝の中腹を高く、先端を下に向けておいて、そこから伸びるツルを一定の高さで切れば、先端の芽からの伸びるツルは長くなり、中腹からのツルは短くなることになり、エネルギーが均一化する、という。一方、弟のステファンさんによると、風通しがよくなり、日光も均一にあたりやすくなる、そうだ。
ワインの試飲は、北から。アペラシオン マコン ペロンヌで最初に試飲した、モン・エパンのレ・トワルというリュー・ディのワインは、クレッセ村の石灰質の畑のブドウ。甘いリンゴのような味に、苦みとうまみがある。いっぽう、ヴィレ・クレッセの複数の畑のアッサンブラージュは、グレープフルーツやオレンジといった柑橘系のイメージだ。ブレイヨンドという、やはり、ヴィレ・クレッセのリュー・ディのものは、2016年の収穫は10月の初旬だったというから、よく熟しているのだろう。先のヴィレ・クレッセと同様の傾向ながら、より、柑橘系のイメージが明確に表現されていた。
サン・ヴェランは、細かくリュー・ディにあわせてのキュヴェのランナップがある。興味深かったのはレ・ロシャというワイン。とろりとした、ミネラルを感じることが原因なのか、レモンをおもわせる酸はなめらかで優しく感じられ、しっかりとしたアルコールによるものか、厚みもある。台地の上の畑だそうで、収穫は早いというけれど、十分に熟しているイメージだ。このワインの傾向は、ドメーヌのサン・ヴェランのワイン全体に感じたけれど、レ・ビュイというリュー・ディのものが、もっとも雄弁にそのスタイルを物語っていると感じる。樽に由来するのかとおもったら100%ステンレスタンク発酵ということなのだけれど、まろやかなうまみと、ヨード感を感じる。
「このあたりはもともと海で、海底が隆起してできた場所です。複雑な土壌が、モザイクのようになっています。サン・ヴェランだけでも40区画あります。全体的な傾向をヴィレ・
クレッセと比べると、より、エレガント。そしてミネラルが豊富で、香りも花のブーケのようです」
若い兄弟による、現代的なアプローチ。マルタン兄弟のような存在が、マコンのワインの多様性と価値を高めていく存在となるだろう。