
ブラン・ド・ノワール好きにはたまらない
軽く歴史に触れておきますと、イタリアでの泡の発祥地はピエモンテ州です。
フランスのシャンパーニュがまだ甘口をせっせと造っていた時代、辛口の泡をイギリスへ輸出していたのが19世紀頃のこと。
次に、イタリア北部でフランチャコルタがスタートしました。ファッションが盛んな商業都市、ミラノで働く人たちがカジュアルに飲める泡を欲しがり、同じロンバルディア州で造られるお手頃なフランチャコルタが人気を博したのです。
近年ドサージュ・ゼロの辛口が世界的に流行、シャンパーニュは黒ブドウを主体にすることが多く、ドサージュしないとタンニンを中心にバランス感を保つのが難しい。ところがフランチャコルタは白ブドウ主体で、ブドウ自体に果実味がありますから、ドサージュしなくても味のバランスがとりやすい。結果、ドサージュ・ゼロ・ブームにも乗る形で、フランチャコルタはさらに売れていきました。
フランチャコルタは高級化路線にジワリと移っていますが、カジュアルでフレッシュなプロセッコはピッツェリアなどで飲むにはピッタリです。でも、高級レストランでプロセッコは、オシャレでないときもあるので気を付けたいですね。多くのプロセッコは、ほかのスパークリングより時間をかけずに造られます。醸造期間が短いワインは、調理時間の短い料理に合う。だから、お刺身のようなスピード感のあるものはプロセッコと合ったりします。これ、ペアリングの技のひとつですよ。
さて、シャンパーニュが好きな人に早めにチェックしてもらいたいのが、トレント、オルトレポ・パヴェーゼ、そしてアルタランガの3つです。
トレントはブラン・ド・ブラン好きにオススメです。オルトレポ・パヴェーゼとアルタランガは、ブラン・ド・ノワール好きにはたまらないはず。とくにアルタランガはDOCGに昇格したのが最近という注目株です。生産者が徐々に増えつつあり、最低30カ月以上の瓶内二次発酵(シャンパーニュは15カ月以上)を経て、きれいな酸とほどよいストラクチャーを持つ高級泡を造りあげています。
価格は少々高めですが、シャンパーニュに比べたら納得の値付けかと思います!
永瀬喜洋
「ラ・ソスタ」ディレクター/ソムリエ。第8回JETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクール優勝。イタリア在住時は、レストランに勤務しながらワイナリー訪問に明け暮れ、20州全部を巡る。
おぼえておきたいイタリアのスパークリング
アルタランガ(ピエモンテ)
2011年DOP認定より興隆のエリア。黒ブドウ主体で、瓶内二次発酵。
プロセッコ(ヴェネト)
アロマティック葡萄から主にシャルマ方式で造るカジュアル泡の決定版。
トレント(トレント)
山がちな地形でミネラルが豊富、キレのあるブラン・ド・ブラン向きの産地。
フランチャコルタ(ロンバルディア)
白ブドウを主体に瓶内二次発酵で果実感あるスタイルが中心。
オルトレポ・パヴェーゼ メトド・クラシコ(ロンバルディア)
良質なピノ・ノワールの産地として昔から有名。瓶内二次発酵。