Château Mouton Rothschild 〜Pauillac〜
われ1級になりぬ、かつて2級なりき
されどムートンは昔も今も変わらず
「ムートン・ロートシルト」の畑は、ラフィットやラトゥールと同じくセギュール侯爵家の所有にあったが、1853年にロスチャイルド家のイギリス分家に属するナタニエル・ド・ロートシルト男爵の所有となる。2年後に有名なメドック格付けが制定され、ムートンは2級に甘んじる。オーナーがフランス人では無かった為、1級が取れなかったとの説もあった。
この時ムートンは“1級にはなれないが2級には甘んじられぬ、ムートンはムートンなり”と言い放ち、1級昇格をめざし地道に改革に専念する。
1922年には、ナタニエルの曾孫フィリップ・ド・ロートシルトがシャトーを引き継ぎ、24年には、長年慣行の樽での出荷を廃止し、初めてシャトーで瓶詰めを行うシステムに変更。45年からは毎年違う現代美術家の制作したオリジナル作品の
ラベルを採用。そして長年の努力が実り、73年ムートンはメドック格付け1級に昇格した。
88年にフィリップ・ド・ロスチャイルドの死後、娘のフィリピーヌ夫人が継ぐ事となる。93年にはセカンドワイン「ル・プティ・ムートン」の生産を始め、カリフォルニアの「オーパス・ワン」の地位を確立させるなど発展に尽くした。夫人が2014年に80歳で亡くなった後は、彼女の3人の子供達がシャトーの経営を担っている。
近年、大型のテクニカル・ヤードが新設され、その中にメドック屈指のミュージアムが併設されている。初期からのラベルの歴史変遷は圧巻の資料で、各国著名人の訪問写真も豊富に展示されている。