8の字の水の流れ
ボンテッラ・ヴィンヤーズがオーガニック栽培を始めて、今年でちょうど30年になるという。
80年代といえば、人々がオーガニックに対し微塵も関心を寄せなかった時代だ。今日、彼らはそれをさらに推し進め、バイオダイナミック農法を実践している。
バイオダイナミックとは、オーストリアの人智学者ルドルフ・シュタイナーの思想にもとづいた栽培法。
殺虫剤や除草剤、化学肥料の使用はもちろんご法度。植物の成長は月や惑星の位置関係に依存するとして、葉の日、花の日、実の日、根の日と4つに区切られたカレンダーにならって農作業を行う。
また牛の角に詰めたうえ、土の中で寝かせた牛糞や、砕いて牛の角に詰めた水晶、鹿の膀胱に詰めて軒先で干したノコギリ草、牛の小腸に詰めたカモミールなど、自然界の物質から作られた調合材を用いるのも特徴。
生物や宇宙の力を利用し、土地や植物そのものを活性化させるという。
ボンテッラでは、これら調合材に必要な植物を育てるためのバイオダイナミック農園を作り、牛糞や水晶の調合材は自家生産。現在、ブルー・ヘロン、マクナブ・ランチ、バトラー・ランチの3つのブドウ畑、合わせて110ヘクタールにおいて、バイオダイナミック農法の管理団体であるデメターの認証を取得している。
今回、バイオダイナミックの畑から生み出されたふたつのスペシャルキュヴェ、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とするボルドーブレンドの「ザ・マクナブ」と、シラー主体のローヌブレンド「ザ・バトラー」を試す機会に恵まれた。
前者は集中力があり、骨格もしっかり。100パーセント、フレンチオークによる24カ月の熟成が香ばしいアクセントになっている。
後者はエレガントでしなやかなテクスチャー。緻密な構造のタンニンがボディを引き締める。これがバイオダイナミックの効果か否かは不明だが、素直に上質のワインだと感じた。