カベルネ・ソーヴィニヨンのスウィート・スポット
カリズマ・ワイン評論家のロバート・パーカーが、初めて100点を与えたカリフォルニアワインは何か?
オーパス・ワンでもなければスクリーミング・イーグルでもない。その答はグロス・ヴィンャーズのカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーヴ85年。驚くべきことに、ワイン造りを初めてからわずか4ヴィンテージ目の快挙であった。
初代ワインメーカーのニルス・ヴェンジはある区画のカベルネ・ソーヴィニヨンが、ほかのものと比べてなにか違うと気がついた。そこで彼は、この区画のブドウのみからワインを造ってみた。出来上がったワインは明らかに、豊潤さや深み、それに集中力の点で優っていたという。
いったい何が違うのか。その秘密は土壌にあった。
この区画の土壌には、石英を主成分とする堆積岩のチャートが含まれている。この石がどのような影響をブドウに与えるのかは不明である。しかし、オーナーのスーザン・グロスさんは、「オークヴィルの谷底で造られるカベルネ・ソーヴィニヨンの柔らかみに、チャートが骨格を与えてくれるような気がします」と言う。
2014年からブドウ栽培とワイン醸造を担うキャメロン・パリーさん。すでにナパ・グリーンのプログラムを実践中のグロスだが、彼が来てからワーム・コンポスト・ティーの散布を始めた。これはミミズを原料とする堆肥を煎じた液体。カルシウムやリンをブドウの樹に供給する。
「今年の春は雨が多く、成長が早い。その分余計に養分が必要になります」と説明するキャメロンさん。
「ブドウの樹は10年やそこらで植え替えるわけにはいきません。だからこそ、サステナブルな視点が重要になります。来年に実るブドウの原型がまさに今、形成されているのですから」
ひと通りの取材を終え、テイスティングルームでスタンダードなカベルネ・ソーヴィニヨンとリザーヴを飲み比べてみると、たしかに何かが違った。
その違いとは、「緻密さ」かもしれない。