ペリエ ジュエ 第8代最高醸造責任者 セヴリーヌ・フレルソン
ベル エポック 2013はふたりのシェフ・ド・カーヴの合作
デューク・エリントンの誕生日で披露されたアネモネのボトル
1811年創業のペリエ ジュエ。メゾンが誇るプレステージ・キュヴェ「ベル エポック」のストーリーは1902年にまで遡る。
メゾンはこの年、アール・ヌーヴォーの巨匠として名高いエミール・ガレに、アーティスティックなボトルのデザインを依頼。
ガレは日本の秋明菊をモチーフとした、見目麗しいアネモネの花をボトルに描いた。ところが当時の技術ではガレがデザインしたボトルの量産が難しく、メゾンは採用を断念。しかし、それから60年余り経った1964年。当時のシェフ・ド・カーヴ、アンドレ・バヴレが、偶然にもガレのボトルをセラーで発見し、これに相応しいワインを詰めることを思いつく。ガレのアネモネをボトルに再現することも、当時ならば可能だった。
かくして、ファーストリリースのベル エポック1964は、5年後の69年、パリのレストラン「アルカザール」にて開催された、ジャズピアニストの大御所、デューク・エリントンの70歳の誕生日を祝う会でお披露目されたのである。
以来、類まれな年にのみ造られるベル エポック。最新ヴィンテージの2013年が登場した。
ペリエ・ジュエ初の女性シェフ・ド・カーヴ
昨年、エルヴェ・デシャンに替わり、メゾン初の女性シェフ・ド・カーヴに就任したセヴリーヌ・フレルソンは、この2013年を「4本の手で造られたベル エポック」と語る。
2013年は例外的な晩熟の年
2013年は、8月の収穫が常態化したシャンパーニュ地方において、近年にない晩熟の年として知られる。
2月の最終週に気温が17〜18度まで上がったが、3月に入って気温が下がり、季節は冬に逆戻り。その結果、開花は7月初旬と遅く、収穫も大きくずれ込んだ。シャルドネは9月28日、ピノ・ノワールは10月1日に収穫が始まったと言う。
「熟度が上がるのをじっくり待てたので、糖と酸の調和がとれたブドウを収穫できました。10月初めにシャルドネを味わったら、テクスチャーがとても素晴らしかった」とセヴリーヌ。
シャルドネ50パーセント、ピノ・ノワール45パーセント、ムニエ5パーセントいう黄金率は変わらず。各品種が理想の状態に達するのをピンポイントで見極め、区画ごとに収穫するため、ブドウ品種の比率を調整することも、年ごとに使われるクリュの構成を変える必要もない。
シャンパーニュの醸造においてアッサンブラージュが最も重要なのはいわずもがなだが、シェフ・ド・カーヴが最終的に手を加えられる作業として、ドザージュもまた大切だ。
「ベル エポックのスタイルを維持しながら、どのような可能性があるか。いくつかのプロファイルが考えられましたが、蓋を開けてみたら、エルヴェとまったく同じリキュールを選んでいました」
エルヴェがセヴリーヌを後継者に選んだ理由のひとつとして、彼女のテイスティング言語や感性が、自分のそれと共通している点を挙げたことが思い出される。ベル エポック 2013は、このキュヴェらしい白い花を思わせるフローラルなアロマに柑橘系の爽やかさ。時間とともにアカシアの蜂蜜やジンジャーなど、さまざまなフレーバーが広がっていく。味わいはじつに上品で、ヴァーティカルなラインを描く。
例外的な年に生まれながら、じつにベル エポックらしいベル エポックに仕上がっていた。
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