発表はオンラインセミナーで
「このボックスをみていると、なんだか笑顔になっちゃうんですよ」
ナイティンバーのワインメーカー、ブラッド・グレイトリックス氏は、オンラインセミナーで「クリスマス・ギフト・ボックス2020」を紹介しながらそう言った。
「各面を並べると、一枚の、ロンドンのクリスマス・シーンを描いた絵になっているんです。デザインはロンドンを拠点に活動している英国人イラストレーターのオリー・マックスウェル氏とのコラボレーション。ビッグ・ベンやタワー・オブ・ロンドン、ロンドン・アイと、ロンドンのランドマークが描かれているんです。」
ナイティンバーは今年、松屋銀座の地下ショーウィンドウで、ウインドウディスプレイをしていたりもする。こんなギフトボックス付きの限定商品も出る。ラグジュアリーな発泡するワインの世界観を打ち出しているその姿は、シャンパーニュやフランチャコルタのようだ。つまり、それをやるだけの自信と力が、ワインの産地としてはまだ新しいイギリスの、このワイナリーにはある、ということだ。
その自信は、ウエストサセックス州、ハンプシャー州、ケント州に10箇所、260ヘクタールもの自社畑をもち、すでに植樹が終わっているものの、まだ収穫には至っていない畑がさらに67ヘクタールもある、という驚くべき規模からもうかがうことができる。シャンパーニュであっても、自社畑のブドウのみでワインを造っている上に、これだけの広さの自社畑をもつ造り手は、なかなかいない。世界トップのスパークリングワインとして、すでに、そしてこれからも、イングリッシュスパークリングは十分に戦っていける、とおもっていなければ、こうはなるまい。
「我々ナイティンバーは自社畑のブドウからしかワインを造らない。成長してゆくためには畑が必要です。」
と、ナイティンバーの醸造責任者、シェリー・スプリッグスは言う。
イギリスは過去も、そして現在も、ワインの世界で、商取引においても、消費量においても、またワインの目利きとしても、主導的な役割を演じている。彼らがそれでも、世界に打って出るようなワインを造らなかったのは、イギリスが寒すぎたからだ。しかし、地球温暖化によって潮目は変わっている。
「2020年は、世界的に大変な年となり、それはイギリスも変わりはありません。ロックダウンもあり、我々はシフト制を導入してワイン造りをおこなりました。しかし、ブドウにとって、天候は素晴らしかった。遅い春の霜の影響が一部にあって、収穫量は昨年よりは減っていますが、一方で、260ヘクタールの自社畑のすべての樹が、十分な樹齢に達し、ナイティンバーのワインとなる資格をもった、初めての年でもありました。9月の終わり頃が、例年よりも暖かく、ブドウは理想的な完熟を見せています。これまで、一番、夏の気温が高かった2018年より、0.2℃、平均気温が高く、収穫も早くおこないましたが、糖度も十分、酸味とのバランスもいい、素晴らしい年でした。」
一般的にスパークリングワインは冷涼な土地で造られる。しかし、いまや、8月に収穫が行われることは珍しくない。収穫が早かったといっても9月の終わり頃、というのは、イギリスという産地の大いなるアドバンテージだ。それだけ、ブドウの熟成を待つことができるのだから。ナイティンバーの畑は、基本的に南向き、海抜も100m以下、というのも、温暖化を逃れるために、日光を避け、高地を選ぶ、昨今の傾向を思うと独特だ。
雨量が多いのも、マイナスには働いていない。というのは、ナイティンバーの畑があるのは、シャンパーニュから地続きの石灰質の土壌か、グリーンサンドと呼ばれる、砂とローム質の土壌のいずれかで、どちらも水はけに優れているからだ。
そして、そのワインの品質は、すでに十分に高い。それは、世界中の評価を見てもわかることだし、今回の「クリスマス・ギフト・ボックス2020」を機に、ナイティンバーのフラッグシップキュヴェであるブリュット「クラシック・キュヴェ」を飲んでみても、すぐに理解されることだろう。そして、このワイナリーはまだ若い。成長の余地がたくさんある、というのが真に驚くべきところだとおもう。
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