目的は日本ワインの個性や地位を高めること
2003年から始まった日本ワインコンクールは、日本ワイナリー協会、(一社)日本ソムリエ協会、(一社)葡萄酒技術研究会、道産ワイン懇談会、山形県ワイン酒造組合、長野県ワイン協会、山梨県ワイン酒造組合、(国)山梨大学ワイン科学研究センター、山梨県の9団体によって構成される日本ワインコンクール実行委員会が主催するもので、今回で16回を数える。
国産原料ぶどうを使用した日本ワインの品質と認知度の向上を図るとともに、それぞれの産地のイメージと日本ワインの個性や地位を高めることを目的とする。初期はいろいろな問題があったらしい。日本ワインコンクールのホームページには2012年、10周年記念シンポジウムの記録が掲載されていて興味深い。ソムリエの田崎真也が司会者から「日本ワインのよいところと欠点を語ってください」と言われて、こう答えている。
「日本産のワイン、これは日本のブドウを使ったという意味でありますが、その中におきましては、多分、推定で10%から15%ぐらいのものは、海外に土産品として自信を持って誇りを持って勧められるようなものがあるのではないかと思いますが、残りの85%ぐらいの中の半分以上は、まあワインと呼べるかなというようなものであり、そして、50%ぐらいというのはワインとはどうも呼べない、呼んでほしくないというようなものも含め、さらに、健康志向からか、亜硫酸無添加についてのクオリティーコントロールといいますか、ここのレベルが非常にひどく、飲み物とも表現できないようなものが市場に流通しているというふうな。日本のワイン、国産品のワインというようなくくりの中においても、クオリティーに非常に大きな差が見られるということがあります。
(中略)
あまりネガティブなことばかりなので、ポジティブなことは、先ほどお話ししましたバリエーションが非常に豊かなことと、15%ぐらいのところというのは非常にレベルの高いものが、地域ということではなくて、今のところは、ブドウ栽培にかかわる方々の努力と、それを醸造する方の努力、個というような単位でレベルの非常に高いものができており、可能性は非常に将来有望ではないかなというふうなことを思います」
田崎はみずからが提案した長野県の原産地呼称の管理制度が2002年から県の主導で施行されるにあたって、官能審査の審査委員長をつとめた。その際、審査の基準をこのような表現で審査員に伝えた。
「落とすか、落とさないかの審査員それぞれの点数をつける際の基準は、これは仮にですが、都内の百貨店のワイン売り場でフランスワインやドイツワインやイタリアワインやその他もろもろ、世界中のワインたちと並んで、日本人が堂々と誇りを持ってその棚に陳列することができるか。長野県の方が、または、日本人が誇りを持ってそのワインを購入することができるかというふうなことを基準に、つまり、都内の、または、世界のワインショップの棚に陳列することができるかどうかを一つの基準として通す、通さないというふうなことを決めてくださいと」
その結果、第1回では20%台しか認定しなかった。しかるに10年後には逆転し、75%が毎回認定されるようになったという。
これは長野県の原産地管理制度の審査の話だけれど、田崎の目には山梨県で開かれている日本ワインコンクールも同様に映っていた。日本のワインは関係者各位の努力によって、急速に進歩したのだ。それから月日は過ぎて、はや6年。本年10月30日から、「日本ワイン」の新しい表示ルールがいよいよスタートする。日本ワインはますます注目を集めることになる。
日本ワインコンクール2018は7月17日~18日の2日間、ボルドー大学ワイン教育部長ジル・ド・ルベル、マスター・オブ・ワイン協会元会長のリン・シェリフMW、ワインジャーナリストのデニス・ギャスティン、ニール・ベケットの外国人を含む25名の審査員が出品ワインの審査を行った。出品ワイン数は787点、というから、これ5グループに分けて審査したそうだけれど、仮に787点を5で割ったとして、1グループ当たり157本。なあんだ、たいしたことないか、かどうかはさておき、昨年度の審査会から、一次審査を廃止し、本審査のみ実施しているそうで、とにかくたいへんな集中力と気力を要するタフな仕事であるに違いない。
審査方法等
・ 5グループに分けて審査
・ 色、香り、味、ハーモニー等の各項目により審査
・ 20点満点で採点
・ 受賞基準は下記のとおり
金 賞:17.0点以上を標準とする各部門エントリー数の3~5%相当
銀 賞:15.5点以上17.0点未満を標準とする各部門エントリー数の10~15%相当
銅 賞:14.0点以上15.5点未満を標準
奨励賞:13.0点以上14.0点未満を標準
※受賞全体の割合は、各部門エントリー数の40%までを標準
・ 各部門のうち、銀賞以上を受賞したものの中で、最高点のものを「部門最高賞」とする(ただし、出品点数が5未満の部門は該当なし)
・ 各部門のうち、銀賞以上を受賞した2,000円未満のものの中で、最高点のものを 「コストパフォーマンス賞」とする
朝日町ワイン、金賞・最高部門賞・コスパ賞を2本も受賞!!
厳正かつ公平なる審査の結果、金賞22本、銀賞88本、銅賞189本が決定した。ここでは金賞で、かつ部門最高賞を獲得した、とびきりのワインだけをご紹介する(本数は出品時残存本数)。
欧州系品種赤部門
シャトー・メルシャン 椀子オムニス 2015
シャトー・メルシャン 山梨県 15,000円 5,380本 2018年9月発売
欧州系品種白部門
安心院ワイン シャルドネ リザーブ 2016
安心院葡萄酒工房 大分県 3,644円 1,114本 発売中
国内改良等品種赤部門
柏原ヴィンヤード 遅摘み 赤 2017
朝日町ワイン 山形県 1,620円 9,000本 発売中
甲州部門
グランポレール山梨甲州樽発酵 2017
グランポレール勝沼ワイナリー 山梨県 2,484円 4,800本 発売中
ロゼ部門
(有)朝日町ワインロゼ 2017
朝日町ワイン 山形県 1,296円 7,700本 発売中
スパークリング部門
フジクレール 甲州スパークリング 2017
フジッコワイナリー
山梨県 2,916円 3,041本 発売中
国内改良等品種白、北米系等品種赤/白、欧州・国内改良品種等ブレンド赤/白、それに極甘口の各部門は金賞が出なかった。
それにしても、山形の(有)朝日町ワインが出品した2本(太字にしました)はコストパフォーマンス賞も獲得している。朝日町ワイン、エライ!!
詳細は、Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)のホームページをご覧ください。