ブルゴーニュらしさとカリフォルニアらしさを融合
アメリカのサスペンス映画『ディスクロージャー』で重要なシーンに幾度と登場し、1990年代後半に人気が沸騰したパルメイヤーのシャルドネ。
「映画の小道具って、どうせ広告だろ? 映画に登場させて知名度を上げようって魂胆」……さにあらず。レストランで出されたワインをたまたま映画プロデューサーが口にしたことで、「このワインだよ、映画に登場させるのは!」と脚本に手を入れて銘柄まで指定。だから、パルメイヤーは広告費を1ドルたりとも支払っていない。映画が上映された途端、「電話がジャンジャンかかるし、でも生産数は少ない限定品だし。オーナーの父、ジェイソンは大慌てだったわ」とクレオ・パルメイヤーは苦笑しながら当時を振り返る。
ブルゴーニュ・スタイルの白で一躍有名になったパルメイヤーだが、赤への思い入れも強い。ジェイソンはボルドー大学で学んだ知識を活かし、ナパの畑でオーセンティックなボルドー・ブレンドを手掛けてきた。カルト・ワイン界で知らぬ者はいないヘレン・ターリーに畑を紹介してもらい、カリフォルニア最高峰の栽培家であるデヴィッド・エイブリューが植樹。人脈を駆使し、スターダムにのし上がる下地は白も赤もキッチリ仕上げてきたのだ。
そして、ボルドー・ブレンドと並行して力を注いできたブルゴーニュ・スタイルを新たなるレジェンドにするべく、2014年にソノマのピノ・ノワールとシャルドネを使う新ブランド「ウェイフェアラー」を発表した。約20年前からソノマ・コーストに所有する畑の名前をそのままブランド名にしたのだ。
ピノ・ノワールはディジョン・クローンの栽培からスタートし、その後、UCデイヴィス校発の新クローンなども取り混ぜ、約20種を区画によって植え分けている。なにしろこの一帯は断層で入り組んだ地質とアップダウンのある形状で、同一エリアとはいえ区画ごとに風味の差がクッキリ。その特徴を生かして生まれたのが、「マザー・ロック」と「ペイジズ・リッジ」だ。
一方、「ゴールデン・ミーン」は、ピノ・ノワールの2種類のクローンをブレンドしたもの。ブルゴーニュの有名な畑から持ってきたクローンだけでつくった「ザ・トラベラー」がフラッグシップで、WAYFARER(歩行者)の「旅行者」という命名にオシャレ感がある。
ウェイフェアラー立ち上げ時にプロジェクト・リーダーを務めたクレア曰く、「エキサイティングな取り組みだったわ。醸造家のヴィヴィアナ・ゴンザレス・レーヴは才能にあふれていて、クラシックなブルゴーニュらしさとカリフォルニアらしさを融合させたの」。
実は17年の秋に来日予定だったのが、カリフォルニアを襲った大規模な火事でキャンセルした。
「こんなときは、ライバル同士だって一致団結(笑)。幸いブドウ畑って水分を持っているから、火から町を守る役割も果たしてくれた。17年のワインはすばらしい出来上がりで、人々も町も回復しつつある。みなさんには今まで通り訪問してほしい」
パルメイヤーにダメージはなかったが、生産者同士が助け合うカリフォルニア気質に則り、地元に踏みとどまった。すぐれたワインを生み出すには、著名なコンサルタントや栽培家との関係だけでなくて、地元のみんなのことを考える心意気も必要なのだ。
Pahlmeyer
Jayson Red Wine Napa County 2015
パルメイヤー
ジェイソン レッド・ワイン ナパ・カウンティ 2015
■品種:カベルネ・ソーヴィニヨン83%、カベルネ・フラン9.5%、メルロ4%、プティ・ヴェルド3.5%
■価格:8,500円
クラシック路線を踏襲しつつ、タンニンは硬すぎることなく果実味豊か。「早めに抜栓し、大きなグラスでゆっくり飲んで」(クレア)。
輸入元:中川ワイン
nakagawa-wine.co.jp