
山本昭彦
ワインジャーナリスト。購読制ワインサイト「ワインレポート」代表。読売新聞記者を経てフリーに。近著に「50 語でわかる!最初で最後のシャンパン入門」「読めば身につく! これが最後のワイン入門」(講談社)など。
福村真弓
JSA認定ソムリエ。イタリア大使館公認ソムリエ。WSET 認定Level 3 Advanced。2011 年イタリアワイン・マスターズにてヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ大使に任命される。2012 年イタリアワイン・ベストソムリエコンクールにて優勝。現在はワインショップカーブドリラックスにてイタリアワインのバイヤーを務める。
ーー日本ではまだあまりなじみのないクロアチアのワインですが、どのような印象をお持ちですか?
山本 紀元前から続くワイン造りの歴史を持つクロアチアは、ヨーロッパでは新しいワイン産地として注目されています。クロアチア東部のスラヴォニアはワインの樽材の産地としても名高いのですが、さらに重要なのは、ジンファンデルのルーツがクロアチアにあるということ。アメリカとヨーロッパをつなぐ品種のルーツであるクロアチアのワインには、歴史的に失われたミッシングリンクを探る面白さがありますね。
福村 フランスやイタリアのワインを極めた方の中には、新しい産地を探していらっしゃる方が多いんです。クロアチアには土着品種が多いので、イタリアワインがお好きな方にお勧めしやすいですね。また、ジンファンデルを飲まれる方にもアプローチしやすいワインだと思います。お値段的にもリーズナブルですし。
ーー「ロイヤルヴィンヤード」のワインを飲んでみていかがでした?
山本 イタリアには海のワインと山のワインがありますが、このワインは圧倒的に「海のワイン」ですね。白とロゼには、ソルティなミネラリティがありますし、香りよりもパレットの方がフレッシュで、見た目の印象より、はるかに日本人に受け入れられやすいワインではないでしょうか。魚介にもあわせやすそうです。
福村 私も「海っぽいワインだな」と感じました。和食によくあいそう。

左から
ヴィーナ・プンタスカラ プラヴァッツ・マリ
クロアチアを代表する土着品種、プラヴァッツ・マリによる赤ワイン。プラヴァッツ・マリは、土着品種ツゥエリエナックとドブリチチとの交配によってうまれたブドウ品種。 参考価格2,900 円
ヴィーナ・プンタスカラ ツェリエナック
ジンファンデルのルーツといわれるクロアチアの土着品種 ツェリエナックによる赤ワイン。ツェリエナックは15 世紀の記録にも登場する、古典的な品種。参考価格3,800 円
ヴィーナ・プンタスカラ ポシップ
クロアチアのアドリア海沿岸地域一帯、ダルマチアを代表する白ワイン用品種、ポシップは古代ギリシャの時代から栽培されている。参考価格2,900 円
ヴィーナ・プンタスカラ ロゼ・スクーロ
ツェリエナック85%、プラヴァッツ・マリ15%でつくられる、クロアチアンロゼ。参考価格2,900 円
ーー山本さんは「ポシップ」推しですね
山本 造りはやや酸化的ですが、香りから想像するよりはるかにフレッシュ。果実の厚みがあり、酸が控えめなところはギリシャのワインにも似ています。魚介にオリーブオイルと塩を添えて一緒にいただきたいワインですね。
福村 オリーブオイルをたっぷり使ったあさりのパスタや春野菜の天ぷらにもあいそうですよ。万人受けするので、ホームパーティなどにも喜ばれると思います。
ーーロゼはいかがですか?
山本 日本のワイン好きはロゼワインを軽視しがちですが、海外では今とても人気がありますし、ポテンシャルは高いですね。このロゼワインはジューシーでザクロの香りがあり、守備範囲が広い。ちらし寿司からデリバリーピザまで、さまざまなおつまみを用意して、お花見ワインとして楽しんではいかがでしょう。
福村 色も濃く、凝縮感があり、しっかり味があるので、まぐろのヅケやお寿司にあわせたい。昼から赤ワインは辛いけど、このロゼなら肉料理にもいけるので昼飲みワインにぴったりだと思います。
ーー赤ワインは福村さんイチオシの「ツェリエナック」からどうぞ
福村 これだけ熟しているのに、酸がしっかりした赤ワインは珍しいと思います。香りはフラワリーで、クラッシュしたベリーの中に穂紫蘇のようなニュアンスも。酸が高く、タンニンのストラクチャーがあり、タイトな印象。鉄板焼きやステーキ、マグロやかつおなどの赤身の魚にも良さそうです。
山本 フレッシュ感のある、おおらかな造りがいいですね。重たいワインが飲みたくない時に、もしくは赤ワインを2本続けて飲む時の最初の一本として、ちょっと冷やしてサービスしたいワインです。ジンファンデルやプリミティーボよりも酸があり、リコリスやタバコのタッチを感じるので、八角などのスパイスを効かせた中華系のチャーシューとあわせたい。
ーークロアチアの赤品種で最大の栽培量を誇る「プラヴァッツ・マリ」はいかがでした?
山本 ツェリエナックの子孫なので、品種の系統は似ていますが、プラヴァッツ・マリの方がよりジューシーでアプローチしやすいワインですね。ガルナッチャ好きにもお勧めしたい。酒質が重くないので、軽いタレの焼き鳥や、塩麹で味付けした唐揚げなど、ライト感覚のおつま
みがあいそうです。タコのカルパッチョや、オリーブオイルとハーブ塩を添えたカツオのたたきにも。
福村 第一印象はスパイシーな香りを持つ個性的なワインです。品種の特性がよく出ていますね。酸とタンニンはおだやかですが、ストラクチャーがしっかりあるので、煮込み系の料理、たとえばラグーのパスタなんかにあいそう。
ーークロアチアにはまだまださまざまな品種があるそうですよ
福村 土着品種が改めて見直されている中、クロアチアはこれからますます注目されるのではないでしょうか。発見の多い産地だと思います。
山本 そうそう、世界的なトレンドは「冷涼な気候」と「土着品種」。ギリシャやジョージアと同じく、土着品種が残っているので、探索のしがいがありますね。