高品質な日本ワイン造りを目指して
日本産ぶどう100%でつくる日本ワインは、近年、ぶどう生育技術やワイン製造技術の向上から、国内外で高く評価されるようになった。国内製造ワインの約2割を占め、平成28年度国税庁発表の国内醸造ワインの概況によると、約215万箱(前年比133%)と市場は拡大している。ワイナリー数も増加しており、現在約280のワイナリーから個性のあるさまざまな日本ワインが販売されているという。
アサヒビールも、この成長市場を牽引している会社の一つ。ワイン製造子会社「サントネージュワイン株式会社」を所有し、山梨県にある1haの自社畑と山形県の契約農家などが栽培するぶどうを使用し、山梨県のワイナリーで高品質な日本ワインを醸造している。2016年の販売量は約7,000箱(前年比120%、1箱=720ml×12本換算)と売上も好調だ。
今後のさらなる市場拡大に向けて、アサヒビールでは日本ワインの商品ポートフォリオを強化し、日本ワイン文化をリードする世界に誇れる高品質な日本ワインづくりを目指すとしている。しかし、そのための課題の一つが日本産ブドウの調達だった。そこで、自社畑の取得を目指して、ワイン栽培に適した場所を探していたという。
余市はブドウ栽培の好適地
今回アサヒビールが取得した農地の場所は北海道の余市。アサヒビールの子会社ニッカウヰスキーのお膝元であり、アサヒビールとは関係の深い場所でもある。
余市町は北海道内でも比較的温暖でぶどう栽培に適した気候。北海道産ブドウの50%が余市で栽培されているという。また北海道初の“ワイン特区”となったことでも話題となり、日本ワイン産地として注目を集めている地域だ。
新たに余市町に取得した農地は4ha。山梨県の1haと合わせ、アサヒビールの所有するブドウの自社畑は合計5haとなった。今後も積極的に農地の取得を検討し、余市町を含め合計10ha以上の自社畑を目指すという。
余市のブドウ畑は、2017年5月から整地作業を始めており、7~8月にかけて垣根を組み上げる予定だそうだ。「サントネージュワイン(株)」でのぶどう栽培の知見を活かし、欧州等で用いられている垣根栽培を取り入れる。「ピノ・ノワール」「ピノ・グリ」「ケルナー」など本格的なヨーロッパ品種を約7,000本を植樹する予定。ファーストヴィンテージは2023年の発売を予定しており、約2,000箱の製造を見込んでいる。
また、ぶどうの栽培にあたっては、日本ワインファンに向けて、ぶどう苗木の植樹や剪定作業などが体験できる「サントネージュ・ニッカ余市ヴィンヤードサポーター制度」を展開する予定だという(募集は2017年末から実施予定)。