今回はストラスブールから電車で20分の村、Molsheimにある Henri Kaes へ行って来たのでその様子をご紹介したいと思う。ここのワインはまだ他では見ない。日本ではおそらく絶対に見つからないワインだ。
と言うのは、今こちらの当主のHenriさんは6代目なのだが、それはぶどう栽培のことで、Henriさんの代からワイン生産を始めたそうで、まだ10年にもなっていない。アルザスには自社ワインを作るワイナリーは現在890あると言われている(引用CIVA アルザスワイン街道パンフレット)。しかしながら、実際には自社ワインを作っているワイナリーも少なくなっているのも事実だ。
そんな中、こちらのワイナリーさんは、HENRIさんの代からワイン生産を始めているというのを聞いてびっくりした。もっと長年作り続けているかと思うほど、味わいもしっかりした美味しいワインだった。また、こちらはビオワイン生産者でもある。
私がワイナリーを訪れた日は、「今日はお母さんがいなくてね」と、お庭で遊ぶ3歳の息子さんと、1歳半のお嬢さんを気にかけながら、細かくアルザスワインの説明をしてくださった。たまに可愛らしい二人が顔を覗かせて、ホッコリとした気分にもなった。
その細かい説明は、アルザスワイン初心者にも分かりやすい。これだけ細かくアルザスワインの説明をしてもらえると、本当に勉強になる。初心者にも良いワイナリー訪問ができるお勧めのワイナリーだ。また、エノツーリズムにも力を入れているらしく、ご姉妹が団体のお客様用にランチの提供などもしているそうだ。
もちろん、試飲もしっかりさせて頂いた。生産を始めて10年という事もあり、ワインの種類はそんなに多くはないが、1つ1つがちゃんとしたしっかりした味だった。先ずはクレマンダルザスから。これは夏にもピッタリのスパークリングワイン。
色々なセパージュを飲ませて頂いたのだが、私のお勧めはゲベルツトラミネール。
ここのゲヴェルツトラミネールは特徴があり、よく言うライチやバラの香りよりも、ゲヴェルツトラミネールの意味でもある香辛料や胡椒の香りが強い。私にとってゲヴェルツトラミネールは「女性的」なワインのイメージだったが、ここのワイナリーのゲベルツトラミネールはそう言う意味では「男性的」なワインだっと思った。
また、何より充実していたのはここのゲヴェルツトラミネールの飲み比べだった。典型的なゲヴェルツトラミネールだけではなく、lieu-dit と呼ばれる土壌のゲヴェルツトラミネール2種とGrandcru(グランクリュ)のBruderthalの飲み比べをさせてもらえた。
さらに、ドイツのアイスワインと同じような生産方法のゲヴェルツトラミネールPRELUDE D’HIVER。デザートワインとも言える甘口ワインで、アルザスでは珍しいアイスワインだった。
そして最後にピノグリ ヴァンダンジュタルディヴで締めくくった。
このゲヴェルツトラミネールの飲み比べはとても勉強になった。Lieu-ditはまだあまり知られていないことも多く、今これを他の地方のようにpremier cru(プルミエクリュ)にしようと動きもあるようだ。
典型的なゲヴェルツトラミネールから始まり、lieu-dit2種とGrandcruの飲み比べはゲヴェルツトラミネールの味の概念を変えるべく、香りも甘さも、土壌の大切さを感じる3種だった。
この村の人口は9200人ほど。
そんな村には現在6つのワイナリーがあるそうで、実はそのうち半分ほどのワイナリーさんには訪れたことがある。他にも良いワイナリーさんがあるのでそちらの訪問記もまた改めて…。
どちらかと言うと、アルザスはコルマール周辺のワイン街道の村の方が有名なのだが、ストラスブールの近くにも多くのアルザスワイン街道の村があり、ステキなワイナリーが多く存在する。けれどこの辺りの村は観光地としてあまり知られていないので残念だと思う。
こちらのワイナリーでのゲヴェルツトラミネール全5種の飲み比べは、これだけでもアルザスワインをさらによく知る一歩だと感じた。
ただのセパージュ違いだけではなく、1品種でテロワールの違いも分かり、良いワインテイスティングができるので、アルザス初心者にもお勧めできる。また、若手で今頑張っていて、ぜひこの機会にご紹介したいと思ったワイナリーさんだった。