そうだイタリアに行こう!
それは全くのひらめきから始まりました。
オーストラリアの金鉱山で働いていたDavidと会計の仕事をしていた妻Chrissieはメキシコ旅行中に「そうだ! イタリアでファームハウスを購入してゲストハウスを始めよう、そして自然の豊かな場所で家族をつくろう」と思いつきました。
そしてウンブリア州ペルージャ郊外に16世紀に建てられた、石造りのファームハウスと12世紀に建てられた教会のある敷地を発見しました。
2003年に渡伊して、電気も水道もない環境下、このファームハウスの補修をし、B&BCasa San Gabriel(http://casasangabriel.com/)としてゲストを迎え、徐々に周囲の土地も購入し、今では敷地は谷全体に及び、120haのうち6haがブドウ畑となってTrebbiano Spoletino、Sagrantino、Sangiovese、Merlot、Cabernet Sauvignion等の品種が栽培されています。
教会も宿泊施設やウェディングとして利用されていて、今ではハリウッドスターもお忍びで来るそうです。
1950年代から放置されていたブドウ畑の瓦礫や鉄くずを撤去し、耕して2013年からワイナリーChiesa del Carmine(https://chiesadelcarmine.com/)としてスタートしました。
内外からの評価も高いワイン達
イタリア語と英語のバイリンガルソムリエ Mattiaの案内で試飲をしました。
白ワインTrebbiano Spoletinoは立ち上がりは白い花や黄色い桃などの華やかな香りがするけれども、きりっとした酸味があり決して甘ったるくなく長引かないのが印象的でした。
赤ワインIl Campanileは、Sangiovese 80%, 土着品種Sagrantino 15% and Merlot 5%のブレンドです。
赤い果実や森の木の実の芳醇な香りに続き、スパイスの渋みが、そして最後に針葉樹のような鋭い後味があり、引き締まります。
敷地内で採れたトリュフのペーストと合せるとトリュフの濃厚さをシャープさもあるこのワインが洗い流してくれるので何度でもお代わりできそうで危険極まりないのでした。
まだ日本に輸出されていませんが、欧州各国やオーストラリアでは既に高い評価を得ており、イタリア国内でも著名ジャーナリストによる『VINI DA SCOPRIRE』という本で、これから注目すべきワインとして選ばれています。
気の遠くなるような努力の果てに
醸造所は少し離れた街ORVIETOにあるため、醸造の様子を見学することはできませんが、広大なブドウ畑を散歩するといたる所に瓦礫や石がむき出しで散在しており足を取られそうになります。
これまで私は先祖代々受け継がれてきた家族経営系のワイナリーを訪問して、手入れの行き届いたふかふかのブドウ畑ばかり歩いてきたので、このような経験は初めてでした。
代々耕されてきた畑と違い、長年放置されていたブドウ畑を再耕作するのは大変な努力が必要だったに違いないことが、足の裏で感じた感触からも推測できます。
しかもイタリア人ではなく外国人であるオーストラリア人が、この世襲制のワイナリーが多いイタリアでここまでの成功を収めるのは素晴らしいことですし、私も含めてイタリアでワイン業界をめざす外国人にとって希望の星になると思います。
むしろ伝統的ワイナリーではないからこそ、新たなことに挑戦できる側面もあります。
例えばこの夏にファームハウスをリノベーションした石造りのVINERIA(ワイン試飲室)がオープンしたし、新登場のSangiovese 100%ロゼワインRosa della Chiesa 2017はそのまま花瓶にできそうな斬新で洗練されたデザインです。
アルパカもいるアットホームなファームハウス
もともとが宿泊施設としてのスタートでしたから、彼らはホスピタリティに溢れています。
知り合ったきっかけは私が昨年7月にこのワイナリーを訪れた際、彼らは不在でMattiaから連絡を受けたDavidからメールが来て連絡を取り合うようになったからでした。
私が渡伊したいきさつを説明すると、「君の勇気には感激した。ぜひまたワイナリーに来てほしいし次回は我々のファームハウスにも宿泊してほしい」ということで昨年10月に再訪することになりました。