歴史ある町CORI
ローマから約50Km南のレピニ山腹にある小さな町CORI。
その歴史は紀元前にまで遡り、小高い丘の上には紀元前80年ごろに建てられた、神殿の遺跡が今ものその雄大な姿を見せ人々を見守っています。
中世そのままの迷路のような町の三か所に、ワインやハムやチーズなどのCORIの特産物のブースが立ち並び、グラス片手に給水所ならぬ給ワイン所を目指して散策しました。
呑んだ後に急な勾配を歩くのは大変でしたが、海抜400メートルの見晴らしの良い広場から、夕陽とワイン畑を眺めながらのワインは格別でした。
いきなりジャーナリストと呼ばれて
私の一日はこれで終わりではありませんでした。
MARCOCARPINETIでブランドアンバサダーを務めているご縁で、ジャーナリストのみを対象にした試飲会とディナーにも招待されました。
試飲会のテーマはこの地の3大ワイナリーCINCINNATO、PIETRA PINTA、MARCOCARPINETI による、CORIの土着品種NERO BUONO di CORI 100%のワイン(2012年、2013年、2014年)の飲み比べでした。
NERO BUONO di CORIは古くからCORI周辺で栽培されている土着品種赤ブドウです。
適度な酸味と滑らかなタンニン、骨格のある存在感、後味のほろ苦さが特徴です。森の実、プラムやスグリのジャム、スパイス、タバコの香りがします。
会場は記者会見形式となり、正面に司会者とワイナリーの生産者が登壇し私を含めたジャーナリストはそれに向きあうように座し、さらに後方にはギャラリー席も用意されていました。
MARCOCARPINETIの当主MARCO(PAOLOの父)がスプマンテKIUS EXTRA BRUT ROSATO METODO CLASSICO(瓶内熟成30ヶ月)と赤ワインAPOLIDE(バリック熟成24ヶ月)について解説しました。
立派な体躯に優しいまなざし、発する言葉には我々は一介の農夫であるとい強い気概が感じられそのたたずまいは野武士のようです。(イタリア人に武士という表現が正しいかわかりませんが)
周りでは年輩の貫録のある男性ジャーナリストが、難しい顔をしてメモを取ったり、いかつい高級機種のカメラで写真を撮っています。聞けば、イタリア有力紙やワイン専門誌のコラム担当者等の著名なジャーナリストらが集っているとのことでした。
それに対して私は本欄にて徒然なるまま記事を書いていますが、ジャーナリストと名乗るにはあまりにもおこがましい存在。生産者と他のジャーナリスト達が闊達に意見を交わす間中、目立たないように息をひそめていました。
ところが司会者がいきなり私を指名して、日本人としてこのNERO BUONO di CORIについてどんな印象を持つか質問してきました。前方にはMARCOをはじめとする生産者、両隣はベテランジャーナリスト、後ろはワイン関係者のギャラリーに包囲され日本人はもちろん私一人、しかもPAOLOは出張中につき不在という完全アウェイで絶体絶命な環境下、何とか思いつく限りのイタリア語を駆使して
「しっかりとした骨格や存在感がありながらも決して重すぎないので繊細な和食にも合うと思う」
と発言しました。
同じ品種で年度も同じで、お互いの畑も近いのにワイナリーによって、前述した品種特有の味わい深い特徴は共通項として保ちながらも、若々しい軽さを感じるワインもあれば、むせるほどタンニンがしっかりして後を引くワインもあり、全く異なる印象を受けました。