剪定するからこそできる、おいしいワイン
寒かった先月がうそだったかのように、昼間にはまるで夏! と思うような日差しと気温になることも多くなりました。ナパの3月の平均気温は19℃くらいとのこと。もうブドウの木たちは冬眠から目覚め、新しいシーズンにむけて動きだしています。
発芽を迎える前に栽培者たちがやらなければいけないこと。それはpruning、いわゆるブドウの木の剪定です。
ところで、野生のブドウの木がどのように育つかご存じでしょうか? おそらくみなさんが想像するフォルムとはだいぶかけ離れていることでしょう。
ブドウはつる科の植物で、そのままにしておくと、できるだけ枝を伸ばしてたくさんの実をつけようとします。すると、多すぎる枝や葉っぱに栄養が取られてしまったり、葉にじゃまされて太陽が当たらないせいで果実がうまく熟さないということがあるそうです。
そういう事態にならないように、剪定は葉や枝の数を制限してクオリティの高いフルーツを収穫する、ワイン造りには欠かせないとても大切な作業なのです。
野生のブドウの木。放っておくとこのように伸びたい放題になります。
※画像引用元→ミズーリ大学エクステンション刊行の論文「Quail-Friendly Planets of the Midwest」よりhttp://extension.missouri.edu/p/MP903-21
奥深い剪定作業
さらに、剪定はぶどうの木を将来どのような形に仕立てていくかを決める作業でもあります。来年、再来年、またその先のことまで考えて枝を切っていかなければいけないのです。残す枝も、鉛筆の太さ程度のものが好ましいといわれていて、太すぎても細すぎてもダメ。
他にも、枝や果実の管理・収穫のしやすさを考慮したり、今期の生育具合を見て、来期どれだけ果実を付けさせるかを決めたり…と、一筋縄ではいきません。でも、ひとつの作業に没頭できるこの剪定の時間は、実はわたしのお気に入りです。
これくらいの太さがちょうど良いらしい
ブドウたちの涙
もうひとつ、わたしが剪定作業を好きな理由があります。
ブドウたちが泣く姿がとっても美しいのです。植物が枝や葉を切られて本当に声を上げて泣くわけではないのですが、切った枝の先から樹液が流れ落ちる様子が、まるで泣いているように見えることから、これを「ぶどうの涙」と呼ぶそうです。
これからどんどん新芽が伸び、一ヶ月もすれば新緑の季節。ワイン造りはもちろんですが、観光シーズンもこれからが本番。
いよいよナパが動き出します。