東京三大煮込み居酒屋へ
火山口のマグマのようにドロリ、グツグツと湯気を放つ大鍋。居酒屋でそんなアヤシイ鍋をみたら、もう頼まずにはいられない。鍋の中身は、モツ煮込み。ノンベエにとって麻薬級にそそられる居酒屋定番メニューだ。
ベースの煮込みに新たな食材を継ぎ足し継ぎ足し、年季が入るほど価値が上がるという不思議。モツ煮込みを出す名店は数えきれないが、東京の三大居酒屋としてカウントされるのは千住「大はし」、月島「岸田屋」、そして森下「山利喜」である。そのなかでとくに山利喜への興味が沸いたマッキー牧元さん、ふらっと立ち寄ってみたのがもう20年前という。
山利喜(本館)
東京都江東区森下2-18-8
TEL 03-3633-1638
営業時間 17:00 ~ 23:00(LO 22:00)
定休日 日曜日・祝日
山利喜の3代目主人はフレンチ出身。2代目主人の急逝をきっかけに山利喜を継ぎ、フレンチの手法や料理で居酒屋メニューにアレンジを加えた。
自家製のテリーヌやピクルス、コンテチーズを追加し、定番のモツ煮込みには赤ワインやブーケガルニを使うように。また、居酒屋としてはいち早くワインを常備し始め、「気軽な居酒屋メニューをツマミにワインが飲める店があるらしい」とのグルメ情報が一気に広まった。一軒家の店舗がいつしか鉄骨のビルへと改築され、隣の区画には新館も建った。客席は確実に増えたが、オープン時間直後から大勢の客が勢いよく席を埋めていく様は今も昔も変わらない。
「山利喜は基本、日本酒の店だと思ってる。でも初めて訪問したとき、カウンターにひとりで座ってる男性客が赤ワインと煮込みを頼んで、文
庫本を読んでたの。その姿が印象的でね」
とマッキー牧元さん。そして、自分で名物のモツ煮込みを食べてみると、やはり赤ワインがピッタリだと確信した。
「煮込みの汁をガーリックトーストに付けて食べたら俄然、赤ワインが飲みたくなる!」
さて、初訪問から20年経ち、山利喜の主人も3代目から4代目にバトンタッチ。現・主人の山田研一さんはソムリエ認定資格を持ち、ワインとツマミのペアリング提案をしてくれるのが心強い。
自然派ワインが豊富に揃う店だが、ワイン持ち込みも可(持ち込み料:3000円/1本)なので、マッキー牧元さんは担いできたコノスルの白赤数本をテーブルへ。コノスルだってチリを代表する自然派ワインだから、山田さんのポリシーと合致する。
さーて、煮込みには力強い赤ワインが合いそうだなぁ〜、ここはひとつボルドー系かなぁ〜、などとマッキー牧元さんが考えあぐねていたら、「ピノ・ノワールです」と山田さんが即答。
「長年煮込むと、つゆの味が繊細で複雑になってくる。いろんな食材の味が入りますから、ピノ・ノワールみたいなちょっと高級感あるワインでもおいしくいただけますよ」
カウンター越しにペアリングのアドバイスまでもらえてしまう山利喜に、マッキー牧元さんはご満悦。よし、続けてやきとんもたっぷり頼もう!