かつ前とは?
浅草は、街並みの変貌スピードがとてつもなく早い。修学旅行生や外国人観光客が押し寄せるメインストリートには、ここ数年でテイクアウト専門店が倍増、スマートなホテルも続々オープンしている。とはいえ、観光客皆無の細い路地へ入れば、まだまだ昭和の風情が残る。静かな裏道を迷うことなく突き進むマッキー牧元さん、向かうは創業70年の「とんかつ ゆたか」だ。東京にはとんかつの名店は数あれど、どうしてココに?
とんかつ ゆたか
東京都台東区浅草1-15-9
TEL 03-3841- 7433
営業時間 11:30 ~14:00(L.O.)、17:00 ~20:00(L.O.)
※ワインの持ち込みはできません。
定休日 水、木
「なんといっても、普通のとんかつ屋とはちょっと違って『かつ前』ができるから」
は?カツマエ??
「『蕎麦前』ってあるでしょ。蕎麦屋さんで最初に肴を頼んで酒を飲み、最後に蕎麦でシメるという。それと同じ流れをとんかつ屋でやるのが、
『かつ前』。この店は居酒屋のように肴が充実してて、まずは肴で1杯やって、最後にシメのとんかつへ。お腹に余裕があればとんかつと白飯、余裕がなければ、とんかつも肴にして飲み続ければいい」
言われてみると、どこか格式の高い蕎麦屋を思わせ、腰を据えて酒を飲みたくなる空間だ。ただ、とんかつ屋にしてはあまりに端正なので、ひとり思い立ってフラッと立ち寄るにはハードルが高いような……
「えー、そんなことぜんぜんないよ。来店時にまわり見てても、ひとりで『かつ前』やってる人はけっこういるもの。じゃあ皆が何を飲んでるかというと、ビールや日本酒なんだけどさ(笑)」
そこで、この日マッキー牧元さんはあえてワイン2本を用意。
コノスルと豚はこう合わせる! それからまぐろのぬたも。
白は「ゲヴュルツトラミネール ビシクレタレゼルバ」、赤は「ピノ・ノワール ビシクレタ レゼルバ」、どちらもコノスルのヴァラエタルシリーズからチョイスした。とんかつとピノ・ノワールのペアリングはイメージしやすいけれど、さて、白は?
「豚の脂のコクと甘さが、コノスルのゲヴュルツトラミネールとすごく合うの。とんかつを塩で食べるときは、断然ゲヴュルツトラミネール!そして、ソースをかけたところで今度は赤ワインの出番。ソースで複雑味と甘さが加わると、やっぱりピノ・ノワールが飲みたくなる。テイクアウトのとんかつ弁当なら、レンジでチンすることなくソースをたっぷり衣に絡めて、ピノとゆっくりやりたいよ」
さらに、まぐろのぬたも赤白両方に合うという。
「まぐろはピノ・ノワールとの相性がいいけれど、酢味噌がからむとゲヴュルツトラミネールのほうが酸と旨味の相乗効果をもたらしてくれる。酢味噌があまりかかってないまぐろの部分は赤、酢味噌をたっぷりつけたら白、と同じ皿でどちらのワインも楽しめるんだね」
なんと粋な、かつ前&コノスルのペアリング! 店に通って20年、コノスル愛飲歴20年、そんなマッキー牧元さんならではの新発見だ。
世界の定番ワイン、コノスルって?
名前は、地図上の南米大陸が「南向きの円錐(コノスル)」に似ていることに由来する。CO2排出を抑えるべくスタッフが車の代わりに自転車を使用し、薬に頼らない害虫駆除のためガチョウを放つなど、環境に配慮したオーガニック栽培に長年取り組む。今回紹介の2本は、品種ごとの特徴を巧みにとらえたヴァラエタル・シリーズ。