秋の味覚と相乗するアルザスの白
伝統を守りつつ、新たな割烹スタイルを発信する店として、ここでは世界の食材を用いた料理を提供している。
「春から初夏にかけてのさっぱりとした上り鰹、一方秋の戻り鰹は脂を蓄えた味わいが魅力です」と語るのは大川陽生(ようせい)料理長。
今回は炭火で藁をいぶし、その煙香を戻り鰹に付けて提供。強火で一気に鰹の皮目をパリっと焼き、身には火が入り過ぎないように細心の注意を払う。温かいうちに、炭の香りとともにポン酢のおろし大根でいただく。
これには『アルザス・グラン・クリュ・ガイスベルグ・リースリング 2013年』(トリンバック)がお勧めだ。
「熟成したグラン・クリュのリースリングは戻り鰹の脂にも負けない主張があります」と支配人の谷沢秀人さん。
続く鱧はカウンターで骨切りする音も五感に響く。
「大振りの鱧は骨と皮が厚いので、炭火で焼いて香りをつけます」と大川料理長が目の前で、炭に骨切りした鱧を巻き付ける演出も楽しい。仕上げには松茸のスープの餡かけをかけ、酢橘をたっぷり搾る。
この料理には『フォンテイヌ・オー・ザンファン 2017年』(マルク・クライデンヴァイス)を合わせたい。
「ミネラル感のある柔らかな風味が炭をまとった鱧や松茸の芳醇な香りと相乗効果を生み出します。これ1本で通せます」と谷沢さん。
アルザスの白ワインと秋の味覚が奏でる渾身の共演だ。