ピノ・グリのコクとアワビの相性
四季折々の食材を麗しく器に盛る店主・五十嵐明良さんは大のワイン好き。カウンター越しにゲストとワイン談義に花が咲くことも多いという。ワインリストはフランス産が中心で、アルザスはグラスでペアリングで提供している。
今回の料理の1品目は甘味が乗った赤ハタのお造り。干し海老と出汁、たっぷり酢橘を搾った酸味のあるジュレをかけ、仕上げに焼いた松茸を添える。香りからも美味しさが漂ってくる。これには『リースリング 2018年』(トリンバック)を合わせたい。
「酸味が強すぎず安定感があり、酢橘の酸味と同調します」と五十嵐さん。
2品目は豪快な三陸産の天然アワビのステーキ。同店では肉ではなく、アワビやノドグロといった食材がメインとなる。このアワビはコショウをふっただけで、米油でゆっくり火を入れて柔らかく仕上げる。最後に酢橘を搾っただけのシンプルな調理法だ。
「米油だけですが、アワビの旨味、コク、甘味が合わさってバターのような風味になります」。このアワビには『ピノ・グリ・ステインウェッグ 2016年』(ドメーヌ・ヴァンサン・フライト)がお勧め。
「ピノ・グリのコクがアワビに負けません。特にこの造り手は少し甘味を感じるので、そこがぴったりだと思います」
23歳の時に飲んだ1本の赤ワインがワインの扉を開け、今はワインの奥深い世界が楽しいという。