何故、イギリス産サイダーを輸入しようと思ったのですか?
田中さん(以下敬称略) イギリスに住んでいたころ「WSET」の授業でイギリスワインがあり、酸度が高いという印象があったものの、心に残っていました。その後帰国し、ワインショップに勤務したのち、2011年にイギリス産ワインを中心に自然派ワインなどにフィーチャしたこの店をオープンしました。
よくイギリスフェアなどでイギリスワインを販売していると「サイダーはないの?」というお客様からの声があったので、5年前からサイダーの輸入を始めました。輸入するにあたりサイダー産地のヘレフォートまで通ううちに「サイダー・ウーマン」というグループから声がかかり、所属しています。
これは生産者やサイダー愛好家などが、サイダー業界の成功を願い、情報をシェアしていこうとするグループ。現在150名ほどが加盟しています。
現在、何種類くらいのサイダーを扱っていますか?
田中 サイダーはリンゴのお酒です。中でもリアルサイダーは濃縮還元などを使わず、100%リンゴ果汁を使 用したものです。現地では小さなサイダリー(サイダー醸造所)で造られるクラフト・サイダー、アルティザン・サイダーと呼ばれるものも人気がでています。
リンゴのお酒は世界30カ国で造られており、ここでは90種類を直輸入しています。そのうちイギリス産サイダーは20種類くらいです。
イギリス産サイダーはどんなタイプが主流ですか?
田中 味わいの傾向はミディアムかドライですね。アルコール度数はだいたい5〜6%のものが多いです。リンゴのお酒「サイダー」は規定では8・5%以下で、それ以上になるとワインと同じ税率になるそうです。
ペリー(ペアサイダー)とは?
田中 ペリー専用の洋ナシで造られたお酒です。ペリーを名乗るにはそれ以外の品種ではいけません。ペリーは低迷時期があり、その時に洋ナシの樹木を引き抜いてしまったのです。
しかし現在は少しづつ見直しがなされていて、イギリスでは約30社しかないのですがペリーを生産してい ます。だいたいサイダー&ペリーをセットで醸造しています。
人気のあるサイダー&ペリーを紹介していただけますか?
田中 左から1「リトル・ポモーナペット・ナット・ペリー 2018年」。ここは2015年に設立されたナノ・サイダリーとして注目されています。醸造家はジェームス・フォーブス氏(写真)です。これはペット・ナット(ペティアン・ナチュレル)の辛口で瓶内二次発酵で造られています。ドライなこの味わいにはシェーヴルやフィッシュ& チップスがお勧めです。
2「ニュートン・コート・サイダー ファースト・プレス・サイダー」はヘレフォートのオーガニックサイダーです。ファーストプレスのみを用いた柔らかな甘味が特徴です。豚肉のソテーのリンゴ添えなどと合います。
3はスコットランドの「シスリー・クロス・サイダー ウィスキー・カスク・サイダー」で、ウイスキー樽を使って熟成しているので、ほんのりウイスキー樽を感じます。パイなどと合わせたいですね。
4の「ペリーズ パフィン・ドライ」は、サマセットのクラフトサイダーで辛口です。シェパーズパイが合うと思います。
5の「アーバン・オーチャード ホークス・サイダー」はロンドン郊外にある生産者でライトタイプのさっぱりした味わいです。こういう缶タイプはアメリカが多いですね。シンプルな味はカレーに合いそうです。
今後の目標は?
田中 ロンドンには例えば有名なバラ・マーケットに「サイダーバ ー」もあります。これからは日本の消費者にも「サイダー」といえば、「三ツ矢サイダー」でなくリンゴのお酒という認知度と、「ワイナリー」とは別の「サイダリー」という言葉を知っていただけるように活動していきたいですね。
ワイン・スタイルズ
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イギリスの大注目サイダー「リトル・ポモーナ」のジェームス・フォーブス氏来日
2020年3月15日、ワイン・スタイルズで、「リトル・ポモーナ」の生産者ジェームス・フォーブスさんも来日してテイスティング会が開催された。前日、東京はみぞれから雪になるほどの寒い一日だったが、当日は快晴で温かな見事なテイスティング日和。
リトル・ポモーナはイギリス、ヘレフォードシャー州の北マルバーン・ヒルの麓にあるサイダー醸造所。来日してくれたジェームス・フォーブス氏は「何か新しいものを造りたい」と2haのリンゴ畑から醸造をスタートさせた。リンゴは手摘み、天然酵母で発酵させて、補糖もしないドライな味わいでキレのあるサイダーが注目を集めている。
この日、訪れたお客さんからはイギリスのサイダー事情などさまざまな質問が飛び、丁寧にこたえていく彼。日本でもサイダーが今後、どんどん注目されていくだろう熱気が感じられた。リトル・ポモーナ氏はキレのあるフレッシュな飲み口はワインよりもフードフレンドリーなので、ぜひ食事とも合わせてほしいも語ってくれた。サイダー文化も日本にさらに根付いてほしい。
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