究極のB級!? 焼きラタトィユ
おお、うまい。
普通のラタトィユより、トマトソースは濃いめの味付け。チーズと玉子がさらにコクを深めている。辛味の強いサラミも入って、前菜ではなく、十分にメインを張れる料理になっている。濃厚だ。
焼きカレーを初めて食べた時にも思ったんだけど、焼き目は旨味になる。カレーにコクが生まれる。焦げ目の食感もいい。このラタトゥイユも同じ。コクが深くなっている。これは、赤ワインの方がいい。白ではこのコクに勝てない。そう考えた。
オレンチは、ワインの品揃えも充実している。グラスワインも、白、赤、スパークリング、それぞれ数種を用意している。店長に相談しながらいろいろ試してみるのも楽しい。
隠し味のフランボワーズビネガーが、赤ワインとのいいつなぎ役をしている。フランボワーズとは、フランス語でいわゆるラズベリーのこと。ラズベリーで作るビネガーは、旨味たっぷりで、フレンチの隠し味によく使われる。
オーナーシェフの斉木学さんは、フレンチ出身だという。フレンチの技法が、ラタトゥユにメイン料理として出せるほどのコクと深みを作り出している。正統派レストランでは絶対にでてこない典型的なB級料理だと思うが、斉木シェフの技とセンス、こだわりがあってこその究極のB級だ。
ワインが止まらない。
旨味堪能、牛タン焼きカルパッチョ
厚めに切った牛タンをロースト。それをスライスして、たっぷりの野菜と一緒に盛り付けた料理。
オレンチは、野菜へのこだわりも強く、新鮮で美味しいワインを食べられる。ソースはバルサミコ酢を煮詰めたもの。これが牛タンにはもちろん、野菜にもよく合う。
牛タンの上に振ってある白いものは本わさび。この香りがクセになる。箸が止まらない。ナイフとフォークでも止まらない。
でも、これってカルパッチョなの? と少し素朴な疑問。。。
シェフに突っ込みたくなる衝動を抑えつつ食べると、すぐにそんなことはどうでもよくなる。うまいのだ。ローストした牛タンは、よくある網焼きのそれより、本来の旨味を感じられるように思エル。食感もいい。噛んだ時の歯ごたえはしっかりあるのに、中はとても柔らかくジューシー。噛むほどに旨味が口中に広がる。
白ワインを合わせたが、バルサミコソースと一緒に食べれば、軽めの赤でも良さそうだ。
斉木シェフにおすすめを聞いたら、イタリア・トスカーナのアナトリーノという答え。トレッビアーノというイタリアでは割とポピュラーなブドウ品種のワインだが、日本ではそれほど知られていない。
さわやかで酸味が効いているが、チーズやバターなどの熟成した香りもあり、なるほどこれなら牛タンの繊細な旨味に合いそうだ。野菜との相性も悪くない。
カウンターで、こんな風に斉木シェフにおすすめを聞いたり、おしゃべりをしながら食べるのは、この店の楽しみ方の一つ。時には、ボードに書きれなかったという秘密の裏メニューを勧めてくれたりもする。
人気の自家製プリンには、くじがついている。フタの裏に当たりと書いてあれば、もう一個もらえる。こんな遊び心とサービス精神がオレンチの魅力だ。斉木シェフのお客さんを楽しませよう、喜ばせようとする気持ちが、料理にも接客にも現れている。
一度行ったらまた行きたくなる。お客さんは、みな、斉木シェフにやみつきなのだ。