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豊潤の炭火焼 気仙沼「福よし」

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気仙沼の名店だ。
絶品の魚が食べられる。「美味しんぼ」にも登場したらしい。
炭火焼がうまいと聞いていたので、炉端席に座り、目の前でカレイとカキの串焼きを焼いてもらいながら酒を呑んだ。

焼き上がるまでのつまみは、刺身の盛り合わせと、イカの腑焼き、カニの味噌和え。
気仙沼は遠洋漁業の船が多く、いいまぐろがあがる。まぐろは中トロだろうか、旨味がしっかり感じられる。
魚は新鮮だからうまいとは限らない。とくにまぐろはそうだ。旨味成分であるイノシン酸は、死後2~4日たたないと出て来ない。
一度冷凍した方がうまくなるという人もいる。魚を知らない料理人では、このうまい刺身はきっとつくれない。

イカの腑焼きは、新鮮なイカの塩辛を陶板で焼く珍味。酒が進む。もちろん日本酒。ぬるめの燗をおかわりした。
カニの味噌和えは、カニ味噌で和えたカニのむき身を甲羅いっぱいに詰めてある。
一人に一杯ずつ、贅沢に食べた。日本酒でもうまいのだが、なぜかビールが欲しくなった。

ここで、炭火焼きが焼き上がった。まずはカキの串焼き。煙でいぶされて燻製のようなコクが感じられる。
中のみずみずしさは残っている絶妙の焼き加減。これまたビールによく合う。
カレイの皮はパリパリだ。でも身はやわらかくジューシー。水分を失いきっていないから、ジュワーっとうまみが広がる。
炭火の遠赤外線効果というやつだ。ここは、焼酎にしようか。お湯割りがいい。
ワインではないが、こういうのをマリアージュというのだろう。

それにしても炭というのは、いい仕事をする。どんな炭を使っているのだろうか。見たところ備長炭ではない。
炭にもこだわりがあるのかと、大将に聞くと、炭は安いあまり質がいいとは言えないものを使っているという。
ちゃんと火加減を調節すれば、十分においしく焼けるのだそうだ。
と言っても、たぶんその火加減が難しいのだろう。私たちがやっても、この味を出すことは不可能なのだと思う。

そう考えると、これまで、備長炭神話にだまされていたのかもしれないという気がしてきた。
備長炭はいい炭であることは間違いない。しかし、それはお客のためでなく、均等に燃えるから扱いやすいという、調理側の都合だったのではないだろうか。
おいしい料理は、料理人の知識と技が作る。切るだけ、焼くだけなのに、大きな差が生まれる。

福よしは、店を震災で流され、翌年、場所を変えて復活した。みんなが待っていた店だ。良かったと思う。
あの震災を忘れないために、頑張っている人たちを応援するために、そして私が生きる元気をもらうために、年に一度、この店を訪れようかと思う。

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hideppo
呑んべえで食いしん坊のおやじライターhideppoです。毎日、飲み歩いているお気に入りの店や、出張先や旅行先で見つけたおいしい店を、紹介していきます。ライターとして、あえて写真を撮らず、文章だけでおいしさや魅力をお伝えできる力をつけたいとチャレンジしています。自分の舌で納得した、安くてうまい店を中心に紹介します。でも、たいてい呑みながら書いているので、酔い加減によっては、同じことを繰り返したり、つじつまがあわなかったりもしますが、あしからず。

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