マリアージュ検証シリーズ第6弾はから揚げ。から揚げ粉を水で溶いて、鶏肉にもみこんで揚げるだけというシンプルな料理でありながら衣の風味にバリエーションをつけるだけで、多彩な味わいが生まれます。
そこで今回は、から揚げ粉にフォーカス。から揚げやフライドチキンの4つの味に寄り添うワインを探るべく、国分グループ本社の家飲みにぴったりなお手頃ワインを用意。
から揚げをこよなく愛するテイスター3名がマリアージュについて語ります。
実践 ワインとから揚げのマリアージュ
#YouFunWineと編集部が検証
今回のテイスターはこの3名
古澤一記さん
「OLTREVINO」オーナーシェフ&ソムリエ。トスカーナ州などで料理人、三ツ星「エノテカ・ピンキオーリ」フィレンツェ本店でソムリエ、ワイナリーで働くなどイタリアに10年滞在。帰国後、2010 年鎌倉に「OLTREVINO」をオープン。2007年「第1 回JET CUP イタリアワインベストソムリエコンクール」準優勝。イタリアソムリエ協会(AIS)認定ソムリエプロフェッショニスタ、イタリアワインテイスター機構(ONAV)認定ワインテイスター、(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
野島麻央さん
国分グループ本社株式会社マーケティング・商品統括部商品開発部開発二課主任MD担当。(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
中西祐介さん
フランスでの交換留学中にワインの魅力に取りつかれ、大学4年時に日本ソムリエ協会のワイン・エキスパート資格を取得。ワインの輸入の仕事に携わったのち渡仏。ボルドー、ブルゴーニュで収穫、醸造を経験し、現地ビストロでソムリエとして研修。帰国後はワインスクール講師などを経て、2009年「Clos Y」を設立。(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ・エクセレンス、国際ソムリエ協会認定ソムリエ(International A.S.I.Sommelier Diploma)、2020年度「第9回全日本最優秀ソムリコンクール」第4位。
検証 その1 ニップン 伝説のから揚げ粉
ニップン伝説のから揚げ粉
2013年に発売され、このたびリニューアル。
浅草にある人気店「縁(ゆかり)」の監修のもと、家庭で専門店の味わいを再現できるようになった。原材料の配合や種類を変えて衣と肉のからみを改善した結果、表現がカリッと揚がり、ジューシーな肉の味が口いっぱいに広がる仕上がりに。また粉を水で溶くタイプなので油汚れが少ないのも利点。
酸味と塩味とミネラルのミュスカデ
田中淳輝(ニップン) 『ニップン伝説のから揚げ粉』は、浅草の人気店「縁(ゆかり)」監修のから揚げ粉で、弊社のから揚げ粉の中で一番売れています。特徴としては肉をしっかりと包みこんだ衣がカリッと揚がり、ジューシーな鶏肉の味わいが楽しめることと、から揚げ粉を水で溶くので油汚れが少ないことです。
古澤 このから揚げは、衣のきめが細かくとてもクリスピー。鶏肉の素材本来の味わい、甘やかさ、コク、そしてジューシーさを感じます。ワインのアプローチは鶏の味わいに、きれいな酸味、塩味、ミネラルが感じられる白が合うかなと思います。そこで『ドメーヌ・ド・ラ・ノエ・ミュスカ
デ・セーヴル・エ・メーヌシュール・リー 白 2018年』がお勧めですね。ミュスカデの酸味と塩味の両方が後味で感じられて、軽やかでとても心地いい味わいです。
野島 私は高校の部活後の夕食は、「これでもか、から揚げ」と叫ぶほど大好きで食べていました。私も古澤さんと同じでドメーヌ・ド・ラ・ノエ・
ミュスカデ・セーブル・エ・メーヌシュール・リー 白 2018年が合うと思いました。ミュスカデ100パーセントのシュール・リー製法で造られてお
り、コクや旨みがあり、から揚げに寄り添う味わいだと感じました。
中西 これはフルーティでフローラルで酸味はおだやかですね。
揚げ物の鉄板 ミネラル&ふくよかな泡
中西 にんにく不使用の衣なので、抑制のきいた味わいは、ロゼや軽めの赤も合うと思います。揚げ物とスパークリングワインは相性がいいので、ぜひ実践していただきたいマリアージュですね。酸味がしっかりしていて、華やかでフローラルな『リンデマンズ ビン 25 スパークリング・ブリュット・キュヴェ 白 NV』がお勧めです。
野島 私は『KWVスパークリング・ロゼNV』のキュヴェ自体が辛口ながら、ほのかに甘酸っぱさがあるので合うと思いました。また脂を泡のキレが流してくれる感じです。
古澤 同じ泡ですが、中西さんと同じくリンデマンズ ビン 25 スパークリング・ブリュット・キュヴェ 白 NV には、ライムやグレープフルーツの風味があり、ミネラルとふくよかさが共存していて、余韻には甘味もある点からお勧めしたいですね。
野島 確かにリンデマンズの方が熟成感があって、より合いますね。これは3月に発売となった新商品です。リンデマンズの中で、最も有名なのがこの「ビンシリーズ」です。実は「ブランド・ファイナンス社」より「世界で最も価値のあるシャンパン&ワインブランド 2020 TOP10」が発表され、1位が「モエ・エ・シャンドン」、5位が「ドンペリニヨン」という中で、「リンデマンズ」は6位という快挙でした。
検証 その2 ニップン 伝説のから揚げ粉 – アレンジ
レモン醤油にハーブ薫るソーヴィニヨン・ブラン
田中 先ほどの『ニップン伝説のから揚げ粉』を使ったから揚げのアレンジメニューのご提案です。大根おろしを添えて、上からレモン3、煮切ったみりん1、醤油2の割合でレモン醤油をかけています。
中西 大根おろしがさっぱりしていますね! しっかりと大根が油脂分を引き立てています。レモンもさほど酸っぱくないですし、みりんがきいています。先ほどのから揚げに比べると、味わいも香りもボリュームが増えて複雑になっています。これには『ガストン ボルドー グランド・レゼルヴ 白 2019年』が合いますね。ソーヴィニヨン・ブラン 100パーセントで、柑橘とハーブのような香りが、大根おろしと小ネギを添えたから揚げに寄り添います。
野島 ガストン ボルドー グランド・レゼルヴ 白 2019年はトロピカルで、香りが立つ印象です。ジューシーで果物を食べているようです。このワインは白ワイン醸造の権威である故ドゥニ・デュブルデュー教授とCVBG社のチーフ・ワインメーカーのトマ・ドゥルイノー氏がタッグを組んで、どうしたらおいしい白が造れるのかと共同研究した成果で、集大成の1本なのです。
古澤 衣がクリスピーなので、大根おろしをかけてもしんなりしません。鶏肉の旨みのある肉汁がジューシーで、大根おろしやレモン醤油をかけて、味わいも水っぽくならないですね。サクサクした食感が続きます。他の白なら例えばソアーヴェも柑橘類や洋ナシの風味をもち、塩味やほろ苦味が合うと思います。
中西 フランスのムニエルなら、ブルゴーニュのシャルドネというようにバターの油脂分とワインの乳酸を合わせたりします。揚げ物と白は、このように沢山考えられますね。
ほのかな苦味のロゼとから揚げの余韻を合わせて
中西 ジューシーなから揚げなので、いろいろ合わせやすいと思います。もう1本は『ロシュ・マゼ グルナッシュ ロゼ 2019年』が心地よくて素直にいいと感じました。このロゼの酒質もひと言でいうならジューシー。赤スグリのような風味とほのかな苦味をもつので、この大根おろし添えのから揚げに合いますね。
古澤 イタリアでもフリットは泡や白と合わせることが多いですね。だからこそ、私はから揚げとロゼのアリアージュを提案したいです。私もロシュ・マゼ グルナッシュ ロゼ 2019年が合うと思いました。このロゼはおだやかな酸味とほのかな苦味があります。大根おろし添えのから揚げの余韻とワインの余韻の足並みが揃っている感じですね。
野島 私もロゼに賛成です。大根おろしに小ネギがかかっているので、ロゼでも、もう少しハーブの風味や青っぽい印象をもつタイプも合うと思います。
検証 その3 ニップン 伝説のから揚げ粉 にんにく風味
ニップン伝説のから揚げ粉 にんにく風味
2013年に発売され、このたびリニューアル。
浅草にある人気店「縁(ゆかり)」の監修のもと、家庭で専門店の味わいを再現できるようになった。原材料の配合や種類を変えて衣と肉のからみを改善した結果、表現がカリッと揚がり、ジューシーな肉の味が口いっぱいに広がる仕上がりに。また粉を水で溶くタイプなので油汚れが少ないのも利点。
甘やかな泡はにんにく風味の余韻に響く
田中 『ニップン 伝説のから揚げ粉 にんにく風味』も、「縁」監修のもと、家庭で手軽に専門店の味わいをコンセプトにした商品です。こちらは、
にんにくを使った個性的な風味にできあがります。
古澤 にんにく風味でありながら、いい意味でデリケートな味わいで、あくまでも鶏肉の味が主役となっています。衣が薄いのにサクサクしていて、主役の素材、にんにくの風味と3つの要素が寄り添っています。ここは素直に王道のスパークリングワインを合わせたいですね。『ロシュ・マゼ シャルドネ・ブリュット 白 NV』は柑橘類の苦味にマンゴーのような蜜の甘やかさがあり、にんにくの風味と合います。
中西 にんにくの風味は優しく、しかしながら余韻の長さはとても長いですね。私もこのロシュ・マゼ シャルドネ・ブリュット 白 NVがいいと思いました。これは熟成感があり、味わいの複雑さが、にんにくの余韻の長さと寄り添います。
野島 私もスパークリングが、にんにくの後味を泡で包むイメージで合うと思います。お二人が挙げたロシュ・マゼのスパークリングワインはミネラリーでコクがあり、そこが合わせやすいですね。
古澤 生のナッツやアーモンドの花のような甘やかさをもつスパークリングワインの白もいいですね。また『KWV スパークリング・ロゼ NV』も果実感、マーマレードのようなほろ苦味があり、これも、にんにく風味と相性がいいと思います。
軽めのバルドリーノは揚げ物の良き相棒
野島 もう1本はヴェネトの『パスクア バルドリーノ 赤 2018年』がお勧めです。コルヴィーナ・ヴェロネーゼを主体にしており、色も淡く、チェリーやベリー系の風味があり、渋みもあまりなく、フレッシュで口当たりがいいです。しっかりした骨格がありながらも、とても飲みやすいワインです。
中西 私もパスクア バルドリーノ 赤 2018年に賛成です。これは軽やかでエレガントな赤で、このから揚げに寄り添ってくれますね。
野島 柔らかな鶏肉の旨み、にんにく風味に、このバルドリーノはぴったり合うと思います。
古澤 お二人が挙げたバルドリーノに賛成です。これはすっきりと軽やかで果実感、旨みの存在感があり、そこがにんにく風味のから揚げと合うと思います。他の赤ならストラクチャーと甘やかさ、熟した果実の凝縮感をもつカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインもお勧めです。
先ほどイタリアではフリットは白と泡が多いとお話しましたが、コースの組み方にもよりますが、実はバルドリーノやキアンティなどの軽めの赤も、よく一緒に飲まれています。
検証 その4 ニップン フライドチキンミックス
ニップン フライドチキンミックス
ホームパーティーなどの定番、フライドチキンが簡単にできる商品。11種類のスパイスを使用した風味豊かな味わいで、表面はカリッとした食感に揚がり、中はジューシーな仕上がりを実現。こちらも粉を水で溶くタイプなので油汚れが少ない。
スパイシーな味わいに甘酸っぱいロゼ泡
田中 『ニップンフライドチキンミックス』も水溶きタイプで揚げるだけです。11種類のスパイスを使ったかなりスパイシーな風味でカリッとした食感を楽しめます。本日は鶏もも肉をご用意しましたが、鶏手羽元でも美味しくできあがります。
古澤 このフライドチキンはスパイシーで香りもよく、衣も薄くてクリスピーでジューシーですね。スパイスが11種類というと辛いイメージがありますが、辛さと甘さのバランスが取れていると思います。
野島 衣はクミンといったカレーのような香りやコショウなどのスパイス風味があり、肉自体の旨みもしっかり残っています。これには南アフリカの『KWV スパークリング・ロゼ NV』が合うと思います。ピノタージュ由来のベリー系果実が、ほのかに甘さや甘酸っぱさを感じさせてくれます。食べ終わった後、お肉の良さとワインの余韻が、いい具合に両方残っていました。
中西 このフライドチキンは、香りをかぐとコショウが感じられ、味わいは、やや辛味がポイント。すると、少し甘さがあるとバランスが取れます。私もKWVスパークリング・ロゼ NVがいち押しです。
古澤 他には、ほのかな甘やかさと酸味とミネラルのあるようなタイプも浮かびます。例えばドイツの白も合うと思います。
フライドチキンの余韻に寄り添う塩味の赤
古澤 スペインの『ドン・ロメロ ティント 赤 NV』は旨みがあり、心地よい味わいで、余韻にきゅっと塩気を感じました。つまり唇をなめてみると「美味しいな」と。これはミネラル感が上がったということです。よってフライドチキンとこのワインは余韻のマリアージュですね。
中西 私も同じくドン・ロメロ ティント 赤 NVがいいと思います。これは酸があり心地よく、料理と合わせやすいです。
野島 フライドチキンがアメリカらしい食べ物ということとスパイスを感じたことから、同じ国のテロワールを合わせてカリフォルニアの甘やかなカベルネ・ソーヴィニヨンも合うと思います。
古澤 少しジャミーなカリフォルニアの赤は、私も賛成です。
今回のまとめ
古澤 から揚げのワイン選びは、レモンを搾って酸味を、塩でミネラル感を、脂に赤のタンニンなどを合わせてアプローチするといいでしょう。
中西 熱々の状態なら冷たいスパークリングワインや白、ロゼを、冷めてきたら赤と、料理の状態によってワインを選ぶといいと思います。
野島 にんにくやスパイス風味など、から揚げの味の違いを意識すると、選ぶワインも異なってくる楽しさを知っていただきたいです。
この記事を書いた人
この作者の最近の投稿
- LIFE2022年2月27日Astier de Villatte からブランド初のパルファンが発売開始
- TRAVEL2022年2月26日エールフランスのビジネスクラスに乗りたい5つの理由
- TRAVEL2022年2月26日ワイン好きなら選びたい 空の上のワインセラー
- スライダー12022年2月25日明日が楽しくなるサステナブルトピックス