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笹倉健一郎さん
東京・麻布十番「アリエ」ディレクター、ソムリエ
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山本晃平さん
東京・銀座「チェナクルーム」支配人兼シェフソムリエ
- 笹倉
- ワイン産地としての南米に注目すると、日本でのアルゼンチンワインはチリ産の次に準ずる人気でしょうか。
- 山本
- 全般的にクオリティの高いワインは多いのに、チリほど世間の認知がまだ追い付いていない印象です。
- 笹倉
- でも、いいワインや産地って、これ以上有名になってほしくない気持ちもありますけど(笑)。
- 山本
- ああ、分かります! アルゼンチンワインのなかでもミッシェル・トリノ「クマ」が、まさにその隠しておきたいタイプです。手頃な価格ながら品種の個性がしっかり打ち出されていて、飲み比べると楽しくなるシリーズ。それでいて、一貫性がある。
- 笹倉
- ラフな廉価ワインにありがちな、下品さがないんですよ。
- 山本
- 確かにコスト・パフォーマ ンスがとてつもなく優れていなが ら上品な味わい。食材の風味を消 す恐れがないので、繊細な料理と 合わせられます。モダンなフラン ス料理とも見事に馴染むわけです。
- 笹倉
- あと、オーガニックという謳い文句を前面に打ち出すワインは、品質にバラツキがあるものも少なくないから、私は正直あまり得意ではなかったんです。でも、「クマ」の品質は常に安定している点が驚きです。
- 山本
- それが可能なのは、カファジャテという山がちな産地のおかげ。標高が1700mで雨もほとんど降らず湿気も低いという、人にとっては苛酷な環境。でも、ブドウにとっては病害の恐れがない恵みの地です。特別に何か配慮することなく、自然とオーガニックになるという。
- 笹倉
- また、そういった気候にマッチした造りを行っているからこそ、きれいでバランスのいいワインが仕上がるんですね。
- 山本
- ラベルのイラストをよく見れば、季節ごとに彩の変わる畑の様子が描かれています。それに合わせて、春から初夏は青く繁った 畑の描かれたトロンテスを中心に。夏は収穫直前の畑のイラストを眺めながら、カベルネ・ソーヴィニヨン。秋から冬は、翌年の実りを待つ静かな風景のマルベック。
- 笹倉
- 春夏秋冬をなぞることができるのはラベルの絵画だけでなく味わいも、ですね。つまり、「クマ」で年間通せる。ホームパーティで重宝しそうです。
- 山本
- さらには3本すべて用意すれば、1日で四季を順々に巡るなんて趣向も楽しめますよ。
「クマ」×「アリエ」の皿
トロンテス × 北海道産ホワイトアスパラガス、ブル グール、ヤリイカ、海老のサラダレモンのコンフィ
トロンテスは海の幸とも相性が良い点に注目、旬の野菜と魚介を組み合わせた軽やかなひと皿に。
マルベック × 和牛のホホ肉の赤ワイン煮込み 粉胡椒をアクセントに
果実の凝縮感に富む赤ワインは、濃厚なソースをまとった牛肉と合わせるとパワーバランス良。
「クマ」×「チェナクルーム」の皿
トロンテス × シェーブルチーズの温製サラダ仕立て プロヴァンスの蜂蜜添え
蜜のような風味を含んだ白ワインに添うよう、あっさりしたチーズに深みのある蜂蜜をプラス。
カベルネ・ソーヴィニヨン × 尾崎牛のポワレ プロヴァンサル風
日本の牛肉が持つ繊細さが、ワインの細やかなタンニンによるビロードのような舌触りにフィット。