検証1 ヒラメ昆布〆
ネタ解説
味わいが淡泊なだけに、寿司職人や店それぞれの仕事振りと個性が現れるネタ。「すしざんまい」では、一度塩で〆て昆布で挟み、じっくり旨みを添わせる手法を採用している。もっとも脂がのるのは冬季。ペアリングの際は、やはり白ワインをチョイスするのがオススメ。なかでも主張の強すぎない品種と好相性だ。
繊細さと造り手の技、
互いの重量感が相乗する
キスヴィンワイナリー
キスヴィン甲州 レゼルヴ2015
【松木リエ 推薦コメント】
「澱とともに熟成させたワインと合わせると、魚の臭みが出にくい」の法則から、シュールリーの甲州です。収穫を遅めにしているので、果実のボリュームと旨みがあるタイプ。マロラクティック発酵により乳酸のニュアンスが、シャリのニュアンスとも合いそう。
検証担当:柳 忠之
柳 まずは味覚がフレッシュなところで、淡泊かつ繊細な味わいの代表格、ヒラメの昆布〆から検証をスタートしたいと思います。僕は「キスヴィン甲州 レゼルヴ」との組み合わせを推します。さて、このワインは松木さんセレクトでしたよね?
松木 はい、旨みとコクの甲州です。実は、個人的に研修としてワイナリーを訪問したり、醸造にも携わっていまして何度もテイスティングをしている経験上、ちょっと自信があるセレクトなんです。ブドウを遅めに収穫し、樽を使ってシュールリー、少しマロラクティック発酵もしているワインです。魚介の臭みを強調しないために、シュールリーはカギとなるんじゃないかなって予測して選びました。
柳 その話、後半に登場する魚卵カテゴリーでより深く検証していきましょう。さて、ヒラメも甲州も、互いに淡泊。でも、それぞれに昆布で〆たりシュールリーだったりと、造り手から側からの繊細な主張とも言うべき、ひと手間のアプローチを施すことで深みと旨みを引き出していますよね。それが非常にいい感じに相乗したので、思わず本日一番の高評価を出してしまいました。皆さん試してみて、いかがでしょう?
鈴木 何とも旨いじゃないですか! 今回は、検証すべきネタが11種もあるのでテイスター各々が総当たりでは気力・胃袋容量的に持たないから採用した割当制のマリアージュ検証ですが、柳さん、こんなにイイ思いしてたんですね(笑)。
一同 うん、これは美味しい組み合わせ!
太田 うーむ。確かに、ピタピタッときます。重量感って結構大切なポイントじゃないでしょうか。あと、あまり意外性はないかもしれませんがロジャーグラート「カバ ブリュット・ナチュール レゼルバ」も合うと思いました。泡モノのさわやかさやキレで口中リセットするだけではつまらないけれど、熟成によるこなれた旨みがうまく作用しています。
ロジャーグラート
カバ ブリュット・ナチュール レゼルバ2014
【柳 忠之 推薦コメント】
まず、香りがニュートラルで邪魔をしないこと。そして瓶内二次発酵によるアミノ酸成分がネタの旨みを増幅させてくれることに期待。新鮮な生の魚介が対象なので、糖分を添加したタイプより、ブリュット・ナチュールの方が重量感のバランスが取れると思います。
検証担当:太田賢一
【注】シュールリー Sur Lie(仏)
発酵終了後、発生した澱を取り除かずにそのまま発酵容器底部に残し、ワインと一緒に数カ月保存する。これにより、複雑味、旨味を引き出す製法。ロワール地方、ペイ・ナンテ地区のミュスカデ種や、日本の甲州種でよく用いられる。