シャンパーニュでいうところのミレジメ
飛田 今日は「この面子なら面白い話ができるかな」と思い、お二人にお声掛けさせてもらいました。
小田島 20代前半からの飲み友達。いつもは、雑誌に載せられないような話ばっかりしてるけど。
飛田 夜な夜な一緒に飲んで、朝方にラーメン食べて帰ってたメンバー。先日もね。
小田島 だけど、いまや本多さんはイタリアワインの重鎮ですよ。2009年、第3回JETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクールで優勝してね。
本多 いえいえ、小田島さんと一緒にいると、世界が広がるんで勉強になるんです。
飛田 小田島さんこそ、お父さんの代から続く割烹で活躍するサラブレッド。いや~、今日はこんな大御所たちと飲めてウレシイな~。僕なんてポッと出です~。
小田島 何をおっしゃいますやら。飛田さんは、夜中に若い人集めて説教する会を開催してるじゃないですか(笑)。
飛田 説教って……「若いソムリエたちにいろんなことを伝えましょう」と、みんなが仕事が終わってから参加できる夜中に、gincssというソムリエのグループの仲間と、試飲セミナーを開催したのです。前回は、70人くらい集まりました。ゲストのセミナー講師役、次回は小田島さんにお願いしたいな。
小田島 やっぱり、洋食系のソムリエさんばかり?
飛田 多いですね。ほとんどがそう。
小田島 ソムリエじゃなくて、鰻や天ぷら、寿司を出す和食店の店主を集めてもよさそう。ワインを出したいのになかなかやりづらい、という人たちを相手にすると、広がりがあるはずなんです。
飛田 うちの「乃木坂しん」も、ワインだけ提供しているわけではないから、日本酒ばかり出る日もあります。でも、お客様が楽しめるなかでワインも日本酒も提案していけたら、と思います。
小田島 さて、フェッラーリのミレジムがテーマだということで、うちで保存していた1本を持ってきました。
本多 編集部からの土産のミレジム2002年もあるんですね。これは豪華ですね(笑)。
飛田 まるで飲み会だ(笑)。
小田島 私が持参したのは、本多さんの名前入りですよ。JETCUPのコンクールで本多さんが優勝したときの記念ボトル。ミレジムは2005年。
本多 もう本人も持ってない(笑)。
飛田 では、ワインについての解説は、やはり本多さん担当でしょうか。
小田島 よっ、ミスター・フェラーリ!
本多 えー、フェッラーリのペルレ・ミレジムは、シャンパーニュでいうところのミレジメ、収穫年入りです。ドサージュを入れて味のバランスをとるあたりも、シャンパーニュに近いスタイル。そして、値段はシャンパーニュの普通のNVと同じくらい。
Ferrari Perle Millesime 2010
フェッラーリ・ぺルレ・ミレジム2010
創業者のジュリオ・フェッラーリはシャンパーニュで経験を積み、イタリアへ戻ってトレントの冷涼な気候と石灰質土壌に着目。シャンパーニュと似たテロワールに可能性を見出し、イタリアを代表するスパークリング造りを手掛けるようになった。現在は年間生産量500万本。スパークリングの産地、フランチャコルタの全生産量に匹敵する数を、フェッラーリ1社で手掛けている計算になる。ペルレ・ミレジムは、手摘みで収穫したブドウをステンレスタンクで発酵。瓶内熟成期間を5年以上設けている。
小田島 どうしても判断基準はシャンパーニュに置いちゃうもの?
本多 フェッラーリの創業者がシャンパーニュで修業したという歴史もあるんだけれど、サービスする側としては、やはりフランスのシャンパーニュを知っておかないと始まらない。フランスワイン好きのお客様に対し、イタリアワインに置き換えて勧めるシーンが多いんです。たとえばブルゴーニュが好きな人へ、ピノ・ノワール一辺倒に考えてイタリアのピノ・ネロを勧めたら?
飛田 お客様から、逆に怒られるね。
小田島 ドイツのピノ・ノワールのほうが、納得してもらえそうだけどね。
本多 だから、ポマールが好きな人に、ネッビオーロやサンジョベーゼのワインを勧めることも。違う産地や品種でも、味わいのバランスが似たものを探します。泡も一緒です。フェッラーリは、シャンパーニュと重なるところが多々。つまりはそれだけ、シャンパーニュをよく知るお客様へフェッラーリを勧めていく方法が、我々にはいっぱいあるはず。