なぜサンジョベーゼには……?
90kmほどドライブを堪能したあと、運転を交代した。本当は交代したくなかったけれど、こんなに素晴らしいクルマを分かち合いたいという気持ちもないことはない。相方だって日本からはるばる来ている。知らない仲どころか、知ってる仲である。そんなわけでおとなしく助手席に移り、退屈な時を過ごした。
ランチはアドリア海に面した港湾都市チェゼナーティコでとることになっていた。レオナルド・ダ・ヴィンチが設計に関わった運河港に面したレストランで青空の下、乗ってきた488スパイダーを眺めながら、という絵に描いたようなシチュエーションに置かれた私は、テーブルに置かれたワインにあらがうことができなかった。
イタリアにおいては食事といえばワインがつきもの。キリストの血なくして、メシはない。もちろんそのワインはサンジョベーゼで、魚介類の料理にもピッタリだった。
それにしても……と私が思ったことも確かだ。なぜサンジョベーゼにはフェラーリほどの華やぎがないのか。フェラーリ級のイタリア・ワインというものがあるのなら、ぜひ持ってきてほしい。単に飲みたいからですけど。いや、そんなものはなくてもいいのです。イタリアのワインというのは、食事とフェラーリを引き立てるためにあるのだ。なんちゃって。