アラサーは迷子になっている
晩秋の銀座。16時をすぎれば早くも宵闇が迫り、ネオンに灯がともり始める。昼から夜へと移り変わる高層階のテラスは少しずつネオンに照らされ、落ち着きと、ときめきが共存する不思議な空間になっていく。
そのテラスでグラスの中で静かにきらめく泡を眺めながら、橋本さんは幸せそうな表情を浮かべた。
「家ではほとんどお酒は飲みません。でも、シャンパーニュだけは別。深夜、仕事から帰ってきて、もう外に出たくないし、寝るだけ。そんなときにミニサイズのボトルを1本。それが私のリラックスの瞬間です」
忙しい毎日の中で、自分に還る時間にシャンパーニュがある。今日、撮影とともに楽しんだのは「テタンジェ ブリュット レゼルヴ」と「テタンジェ プレスティージュ ロゼ」。ともに橋本さんは初体験。まずはゴールド、ブリュット レゼルヴ。
「爽やかですね。上質な爽やかさ。えーと、朝から飲みたい!(笑) 1人なら明るい場所でバゲットと一緒に楽しみたい。誰かと一緒なら、女友達とガールズトークをしながら。このシャンパーニュがあれば、楽しくて永遠に終わらなさそうですけど(笑)」
ガールズトークというよりも、橋本さんなら上質な大人のオンナ同士の会話なのでは?
「それがですねぇ・・・」
笑顔のままで、ちょっとため息。
「大人の会話ができるようなら、みんな彼氏ができたり、結婚したりしていると思うんですよ。どうしたら男性に本当に好きになってもらえるんだろうとか、そんな話ばかり。私も含めて、東京にいるアラサー友達は迷子になってますね。でもこのシャンパーニュなら、ま、いいかってなりそう(笑)」
恋の迷子たちへのエール。ゴールドの輝きが心を弾ませる。では、ロゼはどうだろう。
「こちらは大人の味。深みを感じます。場所なら、大人の集うバー。場面は男性とのデートがいいな。頼り甲斐のある、包容力のある男性がイメージできますね」
ブリュット レゼルヴとは真逆のシーン。ロゼの魔術によって艶っぽい世界が目の前に現れたらしい。
「このロゼを飲みながら、その男性の方にもたれかかってしまいそう・・・」
世間のイメージを代弁すると、酔ったのではなく、計算で?
「そう、わざと(微笑)。なんだか酔ったふりがしやすくなるシャンパーニュだと思うんです」
酔ったふりがしやすい。今まで聞いたことのない発想ですよと苦笑いすると、
「とても素敵な色で、深みが合って、ちゃんと強めにお酒が感じられる。これなら雰囲気にも助けられて、酔っているふりがしやすいかなって。でも、わざととはいっても、自分から肩にもたれかかるなんて、本当に酔わないとできないですよ。私、普段は酔いが回らないほうなんですけど、これだと本当にほろ酔いになれてしまう」
その言葉とともに、銀座の宵に視線を向ける橋本さん。気のせいか、ほんのり赤みが差したような。いや、これも彼女のペースに飲み込まれているのだろうか。