ブルゴーニュのブドウ畑も描かれている15世紀の絵画の謎解き
[みゅう]ブランドで世界各地のオプショナルツアーを展開しているミキ・ツーリストは、旅のスペシャリスト。WINE WHATでは、ワインが充実したクルーズの紹介・体験ツアーを企画した際にご一緒させてもらった。
そのミキ・ツーリストから、海外旅行が難しい現在、少しでも旅の気分を味わえるように、また、旅行が自由にできるようになった際には、より旅を楽しめるようにと、現地のガイドによるオンラインでの様々な企画をはじめた、との案内を受けた。企画のタイトルは「たびOhライブ!」
現在は絵画の解説、というオンラインセミナー(ウェビナー)が数回開催されている。今後は、食やワインをテーマとした放送も行うべく準備中とのことなのだけれど、筆者は、先だって、その第5回、『ヨーロッパの芸術を訪ねて・フランス編 《宰相ロランの聖母》- 隠された意味』というウェビナーに参加した。参加は無料(500円の応援金の募集はあり)。ウェビナー用のアプリケーションも簡単操作なので気軽だ。実際、筆者はウェビナー開始の1時間前に登録して、2分後には受講準備が完了していた。
筆者はパリに住んでいた経験があり、また、芸術の研究をしていたのだけれど、1時間の凝縮されたエンターテインメントに、素直に驚かされ、またすっかり楽しんだ。
ガイドしてくれたのは、中村 潤爾(じゅんじ)さんという方で、政府公認のガイド。美術史のスペシャリストだ。
まずは、新型コロナウイルス対応中のフランスの日常が、どのような状況なのか、が、フランス在住の中村さんから語られ、つづいて、ルーブル美術館が再オープンとなる、というニュースと、再オープン後、どんな形でルーブルに行けるようになるのか、その見通しが語られた。その後、そのルーブル美術館にある、小さな絵画、ヤン・ファン・エイクの『宰相ロランの聖母』の解説がはじまった。
この絵画は、1435年ごろに描かれた絵画とされていて、油絵だ。ヤン・ファン・エイクは油絵の技術を完成させた、といわれる画家で、彼の作品はそういう意味でも重要なのだけれど、それまでのテンペラ画とくらべて、油絵によって、どんな表現が可能になったのか、それがこの絵画ではどんなところにあらわれているのか、実際に、絵画を見せ、適宜その細部を拡大しながら中村さんは説明していく。
そして、この絵画は、小さな絵画ながら、非常に情報量が多いのだけれど、その細部の意味も、部分部分にわけて、絵画を拡大しながら、解説してくれた。柱に描かれている物語、背景に描かれる風景の意味、こっそり登場している画家本人……それから、この絵にはブルゴーニュのブドウ畑(現在のワイン産地でいえばマコンのあたりだ)が描かれていることにも触れた。この絵画はブルゴーニュ公国の宰相だったニコラ・ロランがヤン・ファン・エイクに発注して描かれた絵で、ニコラ・ロランはブドウ畑を所有していたのだ。
サイズ、技法、ヤン・ファン・エイクの腕前が発揮されている箇所、描かれた絵画の意味、目的、時代背景。およそ考えうるこの絵画の語るべき点を、誰にでもわかりやすいように総ざらいして、さらに、ライブならではの質疑応答、現地の暮らしの紹介まで入れて1時間。プロの手腕に舌を巻いた。これで無料はなんだか申し訳なくなる。
この企画、好評なようで、中村さんが解説したモナリザの回は再放送までされている。そして中村さんだけではなく、さまざまなガイドたちによって、これからも、しばらくは、この「たびOhライブ!」が続いていくという。先にもいったけれど、食、ワインをテーマにした回も準備されている。
もちろん、この企画は、旅ができるようになったらぜひ現地で実際に体験してほしい、という旅への期待感を煽ることが趣旨なのだけれど、知的好奇心が刺激されることは間違いない。
スケジュールの確認や参加申し込みは、以下のURLより
https://www.myushop.net/specials/detail/2670
ワインはそのワインが造られた土地の歴史・文化を知っていればより、楽しくなるもの。この機会に、フランスやスペインのこと、楽しく勉強してみるのはどうでしょう?