舞台は、2015年ドイツG7サミットと同じ
6月某日、ベントレーの旗艦ミュルザンヌのニューモデルの国際試乗会に行ってきました。旗艦というのは、ベントレーで一番高い看板モデルということだ。この大量生産の時代に、1台1台、英国の熟練職人がのべ400時間もかけて手づくりしている世界遺産的高級車、自動車のカタチをした工芸品、それがミュルザンヌである。本物のウッドとレザーに囲まれた内装をつくるのに120時間、ペイント前にボディを磨くのに12時間を費やすという。そんな究極の贅沢車の新型をテストするため、筆者は東京・羽田空港深夜発のANAですやすやと眠り、翌朝6時にドイツ・フランクフルト空港に到着、現地で2泊して帰って来たのでした。
フランクフルト空港からチャーター便でオーストリアのインスブルック空港まで双発のターボプロップ19人乗りでひとっ飛び。オーストリア・アルプスの眺めはよかったけれど、気流の関係で、けっこう揺れました。タラップを降りると、新型ミュルザンヌが滑走路の隅っこで私たちを待っていました。ベントレーというのは、ロールズ・ロイスと並ぶイギリスの高級車ブランドで、ロールズ・ロイスのほうがフォーマル、ベントレーのほうがちょっとカジュアルでスポーティ、という位置付けだったわけだけれど、60年以上にわたって同じ会社が持っていたこの2大高級車ブランドは1998年に分離、ロールズはBMWに、ベントレーと工場はフォルクスワーゲン傘下になりました。なので、ベントレーはロールズ・ロイスもつくっていた工場でいまも生産されています。ということで、ベントレーはロールズが占めていたフォーマル分野にも進出し始めているのです。話が長くてすいません。
↑こちらが双発19人乗りのターボ・プロップ。キャビンはけっこううるさくて、クラシックな感じで味がありました。
今回の目玉はミュルザンヌに新たに加わったエクテンデッド・ホイールベース(EWB)です。名称の通り、ノーマルのボディのBピラーから後ろのホイールベースを250mm延ばして旅客機、あるいは床屋にあるような椅子を2脚備えた贅沢なショーファー・ドリブンです。こんなに大きいのに後席には2人しか乗れません。
安全面もあってでしょう、フルフラットにはなりませんが、そうとうリラックスできます。
後ろのバルクヘッドに冷蔵庫もあってグラスを冷やしておくこともできます。
グラスの底にはベントレーのBマークが入ったホイールのカタチが刻まれています。オリジナル商品です。
60年代っぽいクラシックなたたずまいの最新ミュルザンヌEWBの後席でふんぞり返りながら、インスブルックから国境を超えてドイツ側に戻ります。
なが〜い窓から見えるのは、宿泊先のホテル、シュロス・エルマウです。昨年のドイツ・サミットの舞台でもあります。じつはここ、ミュンヘンから南に100kmしか離れていません。そんな便利なところに、わざわざフランクフルトから双発のプロペラ機をチャーターしてインスブルック空港まで記者団を運んだのは、新型ミュルザンヌが滑走路の端っこに並んであたかもVIPを待っている、というような図をつくり出したかったのでしょう。
チェックインを済ませると、きれいなおねえさんが部屋に案内してくれました。窓を開けると、遠くに岩肌をむき出しにした山が見えます。そしてテーブルの上にステキなお菓子がおいてありました。(次ページにつづく)