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マセラティ ジャパン代表取締役
グイド・ジョバネッリ

イタリアンビジネスマンは人生を楽しむ

イタリアンプロダクトのなかで世界中の尊敬をあつめるもののひとつにクルマがある。今回はイタリアを代表するラグジュアリー・カー・ブランド、マセラティの日本法人、マセラティジャパンの社長、グイド・ジョバネッリ氏に話を聞いた。
日本に暮らす、イタリア人エリートの素顔が知りたくて

Guido Giovannelli Maserati Japan

グイド・ジョバネッリ
1970 年生まれ。1996 年、イタリア ピサ大学航空工学修士課程修了。1999 年にFCA グループに入社し、2016 年11 月より、マセラティ ジャパン株式会社 代表取締役社長。自動車、自転車、飛行機、ワインを特に愛する。イタリアの品種以外ではシラーが好き。「でもワインを飲んだら運転しないでくださいね」写真のクルマは、マセラティ グランカブリオ スポーツ

マセラティは快進撃中

ボローニャの街の中心にあるローマ神話の海の神、ネプチューンの像。それが手に持つ三叉の銛をモチーフとしたロゴで知られるマセラティは、1914年にスポーツカーメーカーとして生まれた。20世紀中に、競技でも高級車としても名声を高め、1993年以降、フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)というグループに所属している。FCAはイタリアンブランドであれば、フィアット、アルファロメオ、アメリカンブランドではクライスラー、ジープ等を傘下におさめる巨大グループ。マセラティはそのなかで、もっとも高級なブランドだ。

21世紀のマセラティは、しばらくのあいだ、2ドアの「グラントゥーリズモ」、そのオープン版「グランカブリオ」、そして4ドアの「クアトロポルテ」と3モデルのみをラインナップし、価格は安くても1200万円くらいからというエクスクルーシヴネスだった。販売台数は2012年ならば、世界6,300台。同年のトヨタの乗用車は1月だけで国内約12万台だそうだから、文字通りケタがちがう。ところが、2017年、マセラティは世界に4万8,300台ものクルマを販売した。

成長の原動力は2013年に登場した「ギブリ」、そして2016年に登場の「レヴァンテ」という2つのニューモデル。世界的に流行のプレミアムカー市場に、マセラティが切り込んでの大ヒットとなった。日本でも、2016年に1,300台、2017年に1,800台を販売。おおくの購入者にとって、ギブリとレヴァンテは初めてのマセラティでもあるそうで、ブランドは裾野をひろげ、基盤を固めつつある。

Maserati Levante Nerissimo

現在のマセラティの好調を牽引する「レヴァンテ」。マセラティ初のSUV だ。写真は4 月下旬に発表された、内外装を真っ黒に仕上げるネリッシモ・パッケージを適応したモデル。このほか、同パッケージは、クワトロポルテとギブリで選択できる

その絶好調のマセラティを日本で取り仕切るのが、日本法人のマセラティジャパンに2016年にやってきた、グイド・ジョバネッリ氏。日本に暮らす、イタリアンエリートビジネスマンだ。

飛行機を造っていた

グイド氏はトスカーナのルッカ出身。「この業界にいる人はみんなクルマ好きだけれど、私は18歳で運転免許を取って、将来、レーサーになるんじゃないかとおもって、学校をさぼって近所の峠で練習していたんです。それで3回、クルマを壊して、自分の勘違いに気づきました。でも、乗り物への情熱は強く、航空工学を学んだんです。そんなに真面目な学生だったとはおもっていませんけどね」

とはいえ、タイトルは修士である。

「その後はエンジニアとして、スウェーデンのSAABで、軍用の航空機にかかわりました。フィアットグループとかかわったのも、工学の側からで、設計を生産に落とし込むポジションでの参加です。ランチアの「テージス」を担当したのが最初でした」

30代になるまで、故郷をはなれていたけれど、あるとき、若き日には離れたいとおもった故郷に帰りたくなったという。とはいえ、トスカーナにフィアットの工学系の職はない。

「コマーシャル方面では、職があるというので、そちらに転身したんです。トスカーナのディーラーを統括する仕事でした。結局、すぐトスカーナを離れてパリで暮らすことになっちゃったんですけどね」

それはグイド氏の非凡な才能が発揮されたがゆえで、フランスでのコマーシャル・マネージャーというポジションを得て、2005年からパリに住み、2009年には、西ヨーロッパにおけるフィアット傘下のブランドのほとんどすべてを統括するようになった。2012年からマセラティを担当。12年間暮らしたパリを離れて、日本にやってきたのが2016年だ。

パリ モデナ

グイド氏が主催するパリ・モデナ。中継地点は毎年変わるけれど、パリからモデナまでを約600km、自転車で走破する。2018 年は6 月8 日から13 日までの日程で開催した。詳細は

http://www.paris-modena.com/

ワイナリーももっている

「マセラティを担当することになったときに、会社に条件を出しました。毎年5日間は、私にスポーツをする時間をくれ、というものです」

その5日間で、グイド氏は大好きな自転車に乗る。それも「パリ・モデナ」というチャリティ自転車ツアーの主催者として。文字通りパリからモデナまでを自転車で旅するこのイベント。参加者は1kmの走行につき1ユーロを、重病を患う子供のために寄付する。それで、1人600ユーロの寄付になるそうだ。

「2018年も開催します。楽しいですよ。トレーニングになるし、美しい景色、美味しい食べ物、ステキなホテル……それに歴史的なマセラティを見ることもできます!」

開催は6月。読者諸兄には2019年のパリ・モデナにご期待いただきたい。

このイベントには複数の企業・団体がパートナーとして協力していて、そのなかには、フィアット、マセラティはもちろんのこと、シャンパーニュの「ローラン・ペリエ」、イタリアワインの名門「アンティノッリ」の名もある。

「言わされているわけではなく、私はシャンパーニュが好き。イタリアの優れたワインが好きです。実は私の家族も、トスカーナに小規模なワイナリーをもっています。それは、スーパータスカンなどではないですけれど、普段飲みにはいいワインだとおもいます。個人的にはイタリアの南方の、しっかりした赤ワインも好きで、普段はよく飲んでいます。チロって知っていますか? 南イタリアのカラブリア州のワインです。古代ギリシャの時代にまでさかのぼる歴史もあって、オススメです。白ならヴェルメンティーノのものが好きです」

でも、東京は自転車にしてもワインにしても、イタリアやフランスとはだいぶ事情がことなるのでは?

「東京のイタリア料理は、パリよりずっといいですよ!日本人は求道的だと感じ、尊敬を禁じえません。それに、暮らすのに一番大事なのは、安全や清潔ではないでしょうか。私にはまだ小さな娘がふたりいます。安全で清潔な街ならば、彼女たちを自由にしてあげられるでしょう?」

グイド氏にとっては乗り物への情熱もまた、自由への愛だ。

「クルマはもちろん、スキー、自転車、バイク、船、ヘリに飛行機、なんでも好きです。イタリアでは自家用の飛行機ももっています。日本であれば富士五湖のまわりでのサイクリングが大好きです。出張が週末で終わるときは、金曜日の夜に家族と合流して、そのまま、出先で過ごします。日本に来て2年も経っていないから、発見することはたくさんあります」

最後に、人生は楽しい? と尋ねると「最高!」と朗らかに笑った。

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