シャンパーニュがあれば幸せ
涼風のルーフテラス。シャンパーニュが注がれたゴールドのグラスをすっと持ち上げると、めぐみさんは嬉しそうにつぶやいた。
「あ、グラスに後ろの風景が映ってる。いい場所だなぁ」
その風景は、初夏の青空と隅田川。下町の落ち着いた風情の駒形から、ダイナミックな国際観光都市へと変貌する浅草へ。グラスの曲線にはどこまでの風景が映っているのだろうか。
そして香りを楽しんで目を少し閉じた。ここではないどこかの風景が浮かんだようだ。
「何もしない日、何もしない時間にシャンパーニュを楽しむのっていいですよね。仲のいい女友だちと年に1度、お互いの誕生日の間の日にのんびり旅行に行くんです。ゆっくりできる宿で何もしない時間。おしゃべりは普段もできるから、この日はお互い余計なことは話さずに飲みながらリラックス。
お互いこんな時間を過ごせるような大人になったね、なんて笑いながら。そんな時にシャンパーニュがあれば幸せですね」
普段は「忙しく流されるタイプ」というめぐみさん。積極的に流される、というのは矛盾しているようだけれど、時にはあえて。
「友人のお盆の里帰りについて行くことがありますね。私は神奈川県の出身で田舎がないので、その友人を通して、その町や土地のことを知ることって、とても興味深くて楽しいものなんです。そこで家族になったような気持ちを味わったりするのも楽しい。ちょっと変ですかね(笑)」
旅に欠かせない「幸せの瞬間」がお酒。そして、お酒から広がる幸せな和と輪。
「撮影でも赤ちょうちんを求めて(笑)。1軒入って、地元の方や出張で来られている人から情報を収集して、次の店を決めたりもします。どなたとも話せちゃうんですよね、そういう場って」
クールビューティのイメージもあるめぐみさんの意外な一面。さらにこんな嬉しくも意外な言葉。
「趣味はお酒しかない、というぐらいにお酒が好きなんです」
いろいろな方との交流を楽しむためのお酒、気のおけない友だちと癒しの時間を過ごすためのお酒、そして一人で幸せな時間を過ごすためのお酒も。
これは独り占めしたい
「自分用にいろいろな果実酒をつくっています。さくらんぼやりんご、キウイ。それからコーヒーやアーモンドまで。自分の部屋のそのコーナーを『酒蔵』って呼んでいます(笑)」
酔うことが目的ではなく、素敵にお酒と付き合うことでさまざまなことに出会える。そして素敵な大人になれる。それが楽しい、とめぐみさんはいいます。
人生の先輩として尊敬する、あるご夫婦は素敵な大人の目標だそうです。
「ご主人はウィスキーのオールドパー、奥様はシェリーのティオペペとお気に入りが決まっていて、それをかっこよく飲むんです。私もそれにならって、家ではお気に入りの、この時はこの1本というのを決めています」
では、今回、撮影で用意したシャンパーニュ・ドゥヴォーはどんな時に楽しみたいですか?
「シャンパーニュはシェアするお酒なんですよね? わかります。すごく実感があります。でも……これは独り占めしたい(笑)」
その理由をお聞かせください。
「甘すぎるところがなく、飾らないけれどクールな表情がある。まだ日が暮れないうちに風を感じながら、一人でゆっくり……がいいですね。最初に感じた香りからするとシンプルな白身魚のカルパッチョを妻いながら、のんびり飲みたいな」
大騒ぎする夜ではなく、シャンパーニュでカームダウンの午後。リラックスタイムの気分には、果実そのものが持つ素朴な甘やかさを美しく伝えるエクストラ・ブリュットがちょうどいい。
そろそろ撮影もお時間ですけれど、今年の夏はどのような「幸せな時間」を過ごしたいですか?
「大勢の人とお仕事がしたい。いろんな方とお会いして、そのいろんな方のなかの一人として、いろんな体験をしたいと思っています。一人でなにかに集中したい時と、たくさんの人と一緒に何かをしたい時が交互に私のなかにあって、そろそろこの夏は人のなかにいたい時期になりそうです」
読者のみなさま! 居酒屋で、関めぐみから話しかけられるかも……。もしもそんな奇跡が起こったら、それこそ幸せの瞬間です。